後払い商品を現金化する“ほぼヤミ金”、狙われる18歳新成人 キャッシュレス決済の行方は?:小売・流通アナリストの視点(5/5 ページ)
経済産業省によると、日本のキャッシュレス比率は3割超。コード決済などが普及したが、浸透率は先進国の中で最低レベルだ。日本のキャッシュレス決済はどうなっていくのか?
こうしたサービスは消費者にとっては、今お金がなくても買える上に、利息負担がないため購買に踏み切る確率がかなり上がる。売り上げを獲得したい小売側にとってもありがたいため、金利手数料相当を負担しても加盟したくなるという魅力的な仕組みである。
日本でも20年に割賦販売法改正で後払い類似サービスに関する規制が定められたが、後払い期限が2カ月以内の場合、割賦販売法の規制を受けないということになっている。このため、後払い期間2カ月以内のサービスがさまざま用意され、これからまさに広がろうとしているとみられる。
便利なサービスだが、その反面与信に関する審査が緩く、「クレジットカードの審査基準に達していない消費者」=「貸し倒れリスクの高い層」に向けた与信の拡大となることは課題として認識しておく必要がある。
ITテクノロジーの進展による与信判断能力の向上と少額分散によるリスク軽減で後払いサービスがビジネスとして成り立つということは分かるが、少なくとも一定数の過剰債務者が生み出されることは確実なのだ(BNPL業者のビジネスは一定の貸し倒れを織り込んだ手数料設定によりその分をカバーしている)。
後払いで買った商品を現金化……“ほぼヤミ金”といえる業者も
気になるのは、わが国では成人年齢が18歳へと引き下げられたばかりであることだ。これまでの若年層に加えて新成人層が加わって、リスクに関する知識が乏しい消費者が大幅に増加している。
筆者が見る限りでは、後払いサービスに関してリスクをうたった情報は多くはないため、若年層の方々がこうしたリスクについて十分に意識していないと感じている。新成人などの若年層に向けて、さまざまな手法で注意喚起を行うやり方を考えていく必要があり、本編もそれが趣旨なのである。
この制度を悪用したグレーな取り引きも既に存在する。「後払い 現金化」というキーワードでネット検索して見てほしい。後払いで買った商品を7割程度で買い取って現金化するというビジネスが多数ヒットするのが分かるはずだ。
既に消費者庁などからの注意喚起が発信されており、「短期間で3割相当の金利を取るヤミ金融に相当するビジネスが存在する」と警告しているのだが、これを目にする若者はほとんどいないかもしれない。
本来は、消費者の利便性のための新サービスでも、導入当初は悪用する事例が発生することはよくあることだ。新しいサービスを正しく社会実装していくためにも、リスクについては十分に認識して利用していくことが必要なのである。
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