アウディが仕掛けるEVとSDGs戦略 次世代パワートレインはEVで確定:BEVで勝負(2/6 ページ)
アウディは2026年以降に全世界で発表するモデルは全て電気自動車で、33年を最終期限として内燃エンジンの生産は段階的に廃止する。岡山県真庭市で実施したツアーの様子と共にEVとSDGs戦略をひもとく。
アウディと真庭市の方向性が一致
アウディは「Future Is An Attitude(未来は 考え方ひとつ。)」というブランドビジョンも標ぼうしている。シェーパース氏は、「このツアーを、脱二酸化炭素やSDGsの重要性を考えるきっかけにしてほしい」と思いを吐露した。
では、なぜ真庭市なのか。その理由は、同市が20年3月に地域エネルギー自給率100%の「ゼロカーボンシティまにわ」を宣言し、サステイナブルな社会を実現することを目指しているからだ。岡山県では、同市や倉敷市など4つの自治体が内閣府からSDGsの未来都市に選定されている。
岡山県北部にある真庭市は、05年に9町村が合併してできた市で、21年3月1日現在、人口は約4万4100人、1万7700世帯、面積は828平方キロメートルと、東京23区の1.3倍という岡山県最大の広さを誇る自治体なのだ。
主要産業は農業、林業、製材業で、市の面積の80%は森林が占める。豊富な森林資源を使ってバイオマス発電をし、市内に電力を供給している。バイオマスとは、動植物などから生まれた再利用可能な生物資源のことで、これを燃やしたりすることで発電をする。燃やすので二酸化炭素(CO2)は発生するものの、植物は光合成により二酸化炭素を吸収して成長することから、バイオマス燃料は「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」で採択された「京都議定書」で、「CO2排出量ゼロ」の燃料と定義された。
15年に稼働を開始した真庭市のバイオマス発電所(総事業費41億円)では、発電能力は1万kW(キロワット)で、市の世帯数を超える約2万2000世帯分の電力供給が可能となった。もちろん、市役所や小中学校などの公共施設にも使われている。余った電力は電力事業者に売電され、その収入は約23億円にのぼり、50人の雇用を生み出した。
同市の太田昇市長によると「市内のバイオマス産業による付加価値は52億円」と試算されるという。
ごみの取り組みもユニークだ。一部の地域から収集した生ごみ、し尿をバイオ液肥プラントで発酵させて液肥をつくり、それを市民や農家に無料で提供するというものだ。年間1500トンの肥料を作っている。現在は試作プラントだが、24年には本格的なプラントが稼働するという。
太田市長は「市内3カ所あるごみ焼却施設を1つに集約できるようになり、し尿のくみ取り施設なども不要になる。その結果、ごみの処理費用は7億円から2億円に減る予定だ」と話し、サステイナブルなだけではなく市の財政にも貢献するとした。
ゼロカーボンシティを目指すきっかけは何だったのか。それは過疎化、高速道路開通によるストロー化による経済の衰退に危機感を抱いた真庭市に住む20〜40代の地元経営者などが、「21世紀の真庭塾」を創設したことだ。
その中に、今回のツアーで立ち寄った1804年創業で「御前酒蔵元」を製造する辻本店がある。地元の米や水を使った酒造りをしているほか、高度な醸造技術を生かし、普通はせんべいなどに使われる等外の米を活用しておいしい酒を造ったり、余った酒粕から赤酢を作ったりするなど、エコな酒造元として奮闘している。
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