アウディが仕掛けるEVとSDGs戦略 次世代パワートレインはEVで確定:BEVで勝負(3/6 ページ)
アウディは2026年以降に全世界で発表するモデルは全て電気自動車で、33年を最終期限として内燃エンジンの生産は段階的に廃止する。岡山県真庭市で実施したツアーの様子と共にEVとSDGs戦略をひもとく。
EV版ガソリンスタンドが立ち上がってくる
その後、アウディ、真庭市、岡山大学の3者による「未来共創ミーティング」を取材した。サステイナブルの価値を体験する観光施設「GREENable HIRUZEN」で実施された。興味深い議論が繰り広げられるだけでなく、BEVの未来が、うっすらと見えてくる意見交換会になった。
冒頭、シェーパース氏がプレゼンテーションをした。アウディでは、ディーラーを経営する協力会社の投資(約30億円)によって、年内に国内52拠点に150kWの急速充電器を導入する計画だ。現在、高速道路にある充電器でも50kWであり、アウディの充電器はこの3倍の出力がある。いずれ全国110店のe-tronを取り扱うディーラー全てで導入する予定となっているとした。
一般家庭での充電器は3〜8kWの出力で、8キロの航続距離を10分で充電できる。150kWなら140キロの航続距離の充電を同じ10分でできるとし、「政府の動きを待つより、まずアウディはディーラーさまと一緒にやっていきたい」と話す。
シェーパース氏はフォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)の社長も兼ねている。同氏はフォルクスワーゲンやランボルギーニなど傘下ブランドの急速充電ネットワークも広げていきたい考えだ。その結果、アウディのオーナーがフォルクスワーゲンの販売店で充電できるようにすることによって利便性の向上を図る。
その一方で、8kWの充電器は、宿泊施設やゴルフ場など長時間駐車する場所では十分な機能をもっているので、今後は全国で設置を進めていくと発言。充電器のネットワークづくりに力点を置いていると強調した。
参加した学生からは、次のような質問が出た。太陽光発電を研究している兼信みのりさんは「EVの導入が加速し、雨や曇りで太陽光発電が稼働しないときに、火力発電に頼る形になる。走行前の発電の段階で見た場合、EVに充電するために火力発電の力を借りることになるが、CO2排出削減につながっていくのか」と質問した。
シェーパース氏はこう回答した。
「確かに今の時点では世界各国でその問題があり、今後は解決していく必要がある。しかし、幼稚園の前や住宅街で排気ガスが出される場合と、発電所など郊外でコントロールされた場所で同じレベルのCO2が出るのとどちらが良いのか。さらに排気ガスにはNOx(窒素酸化物)の問題もある。今、車がどこにあるのかでも変わってくるので、そう考えると、BEVには直接的なメリットは今日もあるし、明日でもある」
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