アウディ、持続可能な世界を実現するための「巻き込み力」:BEV普及の課題(1/5 ページ)
アウディの日本法人がSDGsをテーマにしたツアー「Audi Sustainable Future Tour」の2回目を岩手県八幡平市で開催した。アウディが企画したこの取り組みには、電気自動車(BEV)や再生可能エネルギーを日本で普及させ、持続可能な社会を実現させるための議論を深めたい狙いがある。
ドイツの高級自動車メーカー、アウディの日本法人がSDGsをテーマにしたツアー「Audi Sustainable Future Tour」の2回目を岩手県八幡平市で開催した。これは前回の岡山県真庭市(アウディが仕掛けるEVとSDGs戦略 次世代パワートレインはEVで確定)に続くものだ。
八幡平市は1966年に日本で初めて地熱発電を商業化した自治体で、地熱発電を生かして街づくりをしている。
アウディが企画したこの取り組みには、電気自動車(BEV)や再生可能エネルギーを日本で普及させ、持続可能な社会を実現させるための議論を深めたい狙いがある。
充電施設はあと1万カ所必要
「アウディが仕掛けるEVとSDGs戦略 次世代パワートレインはEVで確定」では、アウディや欧米の自動車メーカーは、今後BEVを推進していくことを決断したと書いた。アウディが欧米だけではなく、日本市場でBEVを普及させる方策を考えるのは当然の企業努力だ。
日本でBEVを広めるにあたり、ネックになっているのは充電設備だろう。経済産業省・資源エネルギー庁が2022年7月に発表した21年の揮発油販売業者数及び給油所数では、事業者が1万3008社、給油所が2万8475カ所ある。
一方、EVの充電スタンドは地図情報の調査・制作をしているゼンリンによると22年8月末で1万7677拠点だ。そう考えた場合、あと1万カ所ほど充電拠点が増えると、日本人の実感として「充電設備がどこにでもある」という感覚になるのかもしれない。
アウディ ジャパン ブランド ディレクターのマティアス シェーパース氏は以前「BEVの普及率が上がってきた段階で、『BEV版のガソリンスタンド』の運営をビジネスにする会社が立ち上がってくる」と語っている。
そこで21年にどのくらいEVが売れたのかを見てみた。
日本自動車販売連合会が発表した乗用車合計(普通+小型)が239万9862台で、そのうちEVの販売は2万1049台でわずか0.88%だった。1%にも満たないだけに、BEV版のスタンドが立ち上がり、市民の不安を解消するにはまだまだ時間がかかる。
アウディは自前で充電ネットワークを拡大
そんな中、アウディ ジャパンは自ら充電施設のネットワークを拡充している。
22年11月29日に開催された「Audi Q4 e-tron Dynamic Launch」の中でシェーパース・ブランド ディレクターは、アウディのディーラーの協力の下、24年までに目的地充電として使用できる8kW(キロワット)の普通充電器を全国300カ所(ゴルフ場、宿泊施設など)で、合計600基の充電器を設置する。
急速充電ネットワークについては、150kWのアウディとポルシェ合わせて110カ所ある。これに23年は90kWを8カ所、50kWを42カ所の計50拠点の既にアウディディーラーに設置されている急速充電器を、150kWの急速充電器に置き換える。
さらにグループ企業であるフォルクスワーゲン、ポルシェと「Premium Charging Alliance(PCA)」というアライアンスを組み、90〜150kWの急速充電機を210拠点、222基を段階的に整備。つまりアウディのカーオーナーはポルシェなどのディーラーに赴いて充電することも可能になった。
このように、自前で充電施設を拡充することによって、不安解消に努めている。
テスラは、充電器について独自規格で推進していて、こちらも自前で充電設備を整備している。欧米企業に感じるのは「日本政府を含め、まだ積極的に充電設備を整備する状況にはなっていない。それであれば政府の動きを待つのではなく、資金はかかっても自ら開拓するしかない」というマインドだ。
日本は、社会全体で最終的なパワートレインを何にするのかについて煮え切らない態度を続けた結果、欧米企業に引っ張られてBEVにシフトしている印象が否めない。
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