三菱地所が目指す「有楽町改造計画」の全貌 解体予定のビルに生まれた“謎空間”とは:一等地にアーティストの工房?(2/5 ページ)
20年前の東京・大手町、丸の内、有楽町を覚えているだろうか。午後3時にはシャッターが閉まり、週末はほぼ無人になる寂しいオフィス街だった。だが、この20年で街の風景は大きく変わり、道行く人の顔ぶれも多様に。社会の変化を追い風にして次の10年へ。これまでにない街を目指す大丸有の今を聞いた。
28万人の就業人口を100万人に
「2000年代の主に東京駅周辺の建物の更新が主体となった時期を第一次、住宅、ホテルなどを含めた開発で街の機能が進化、拡大した10年代を第二次とすると、20年以降は今までと異なるNEXTステージと位置付けられる」と話すのは、三菱地所プロジェクト開発部有楽町街づくり推進室を統括する山元夕梨恵氏。
リリースの説明によると目指す姿は「人・企業が集まり交わることで新たな『価値』を生み出す舞台」とある。集まる、交わるのであれば、大丸有内にはすでに複数のインキュベーション施設(起業者の事業拡大や成功を支援する施設)などがある。だが、そこには今まで「アーティスト」はいなかった。しかも、話を聞くとアーティストだけではなく、もっと多様な人たちが集まる街が模索されていた。
「現在の大丸有の就業者数は約28万人。オフィスに席があり、コロナ前には毎日出勤していた人たちです。丸ノ内NEXTステージでは1週間に数時間だけ来る人なども含め、大丸有に関わる人を100万人にしようと考えています。
そのためには就業者だけでは足りませんし、そもそも就業者もコロナ禍でオフィスに行かなくて済むようになり、減ってきています。面白いイベントで人を呼ぶだけではそこまでは増やせません。
考えたのは大丸有を1回きりではないつながり・役割のある居場所にすることで、自分の意思でやりたいことがある人たちが来たいと思える場所にすることです」(山元氏)
「バー変態」が生む、熱いリアルな人間関係
そのために先導プロジェクトでは建替えまでの期間限定ながら常設の2つの場所を作った。ひとつは新有楽町ビル10階にある「有楽町『SAAI』 wonder working community」(以下、SAAI)と名付けられた、見え方としてはシェアオフィスだ。
「アイデアをおもいつき、カタチに」する場として位置付けており、主にビジネスパーソンを対象に新規事業の提案など、何かをやりたいと思っている人をターゲットに想定している。それ以外には兼業、副業の人もいれば、スタートアップの人たちもおり、現状350人くらいが参加している。
「リモートワークの場でもありますが、基本はコミュニティー。自分で動く、やりたいことがある人の背中を押す、あるいはまだその思いに気づいていない人を目覚めさせる場になればと考えています。
私自身、この10数年で会社、働き方、働く場所やルール、ツールが変わったことで個人の意思でこうすべきと考えたことが仕事で反映されるようになり、それが非常に楽しい。これが働く意味だろうと思います。アサインされる人から自分で動く人になることで仕事をタスクではないモノにしていく。そんな場を想定しています。
そのため、参加する際には面談を実施し、将来何がしたいかを必ず聞きます。コミュニティマネージャーが常駐しており、メンバーと会話をしたり、メンバー同士をつなげる手助けをしたりしています」(山元氏)
それ以上にSAAIらしい仕掛けとして用意しているのが『バー変態』だ。施設中央にカウンターのあるバーコーナーを設けており、SAAIメンバーの希望者が交代でチーママ、チーパパを務めるという。コミュニティマネージャーにつないでもらうだけではなく、“自分からつながりに行く”という場なのだ。
コロナ禍でしばらくはオンラインイベントを開催してきたが、リアルの熱量は全然違うと山元氏。オンラインだとイベントが終わった途端に画面がぷつんと切れておしまいだが、リアルだと終了後も会話が続き、名刺交換その他一見無駄な時間が続く。
オンラインで一度会った人と意気投合、一緒にビジネスをしようという展開まではなかなかたどり着きにくいが、リアルだと時としてそこまで一気に行ってしまうこともある。バー変態は個人対個人の、そうした熱い出会いの場所を目指しているのだ。
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