パワハラを根絶するために知るべき“5つのポイント”:働き方の「今」を知る(4/8 ページ)
パワハラ被害に関するニュースが後を絶たない。どうすればパワハラはなくなるのだろうか? パワハラ被害を未然に防ぐ方法、パワハラが起きてしまった際の対処法などを、ブラック企業アナリストの新田龍氏が5つの項目にまとめて解説する。
(3)教育研修実施
教育研修というとありきたりで、「そんなこと、既にウチでもやってるよ」などと思われるかもしれないが、実は研修こそ、職場でのパワハラ予防に最も効果が大きい手段なのだ。
パワハラ加害者の多くは無自覚だと述べたが、だからこそ統一判断基準を設け、メンバー全員に研修を実施し、人それぞれで異なる「判断基準を統一すること」が必要なのである。
教育研修は、可能な限り全員が受講し、かつ定期的に実施することが重要だ。研修内容には、トップのメッセージ内容を含めるとともに、組織として統一設定したルールの内容、取り組みの内容や具体的な事例を加えると効果的である。
研修目的はもう一つある。統一ルールを周知することで「自分は聞いていない」「知らなかった」といった言い訳や、「これはパワハラか否か」という不毛なやりとりを生じさせず、パワハラにまつわるトラブルの解決を早める効果だ。
社員全員に同じ研修を実施していれば、パワハラ行為が発覚して指摘をする際にも、「研修で、当社におけるパワハラ認定基準は説明しており、あなたは受講しているはず。それなのにあなたはパワハラに当てはまる行為をしており、ルールに違反している」と説明できる。
逆に、単なる一般的指導に対して「パワハラだ!」と訴えてくる場合には、「あなたはパワハラだと主張するが、本件は研修で勉強した『パワハラに当てはまらないケース』に該当する。これは正当な指導の一環である」と、堂々といえるようになる。
過去、パワハラにまつわる組織内トラブルに巻き込まれた方であれば、このように言い切れることがいかほど有効かお分かりいただけるはずだ。自組織には統一ルールがあり、そのルールを破った場合は処分するし、被害者は守られる、という前提が共有できて初めて、組織におけるパワハラ対策が機能し始めるといってよいだろう。
(4)パワハラにならない指導とコミュニケーションを徹底する
ここまでの準備と目線合わせができれば、後は日常のコミュニケーションに配慮するまでである。ではどこまでが「指導」の範囲内で、どのような行動や発言からが「パワハラ」となるのだろうか。
過去の判例では、たとえ業務遂行目的だとしても、
- 感情的な怒号や粗暴な言葉遣い
- 指示内容が抽象的、感覚的で伝わらない
- なぜ叱責されているのか理由が分からない
- 相手の受忍できる限度を超える長時間や高頻度
といった要素が含まれると、パワハラと判断されてしまう傾向がある。逆にいえば、「業務遂行や育成指導のために必要なもの」であり、「合理的な内容」で、「相手に対する人格的な攻撃が含まれない」ならばパワハラではないと判断されている。指導の際には理不尽な叱責と捉えられないよう、指示や指導の理由を明確にし、相手が不本意と感じるような言い回しや繰り返しは避けるよう配慮すべきである。具体的には、このような流れで実施するとよいだろう。
- 指導の目的、相手にどうなってほしいかというゴールイメージを共有する
- 相手の理解に合わせて言葉を選び、具体的に伝える
- 相手のミスやトラブルによって、どんな問題や損失が発生しているのか説明する
- 改善のために今後どう行動するか、本人の意見も聞きながら策定する
- 業績が良くても、ルールを守れない者は評価できない、といった姿勢を伝える
- 今後も問題が続くようであれば、就業規則に基づいた処分に該当する旨を伝える
- 最後に、指導が伝わったか本人の言葉で説明させる
このように指導していけば、部下としても何が問題で、何をなすべきか理解できるはずだ。指導の目的は相手を畏怖させて支配することではなく、主体的に行動が変わることである。
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