パワハラを根絶するために知るべき“5つのポイント”:働き方の「今」を知る(5/8 ページ)
パワハラ被害に関するニュースが後を絶たない。どうすればパワハラはなくなるのだろうか? パワハラ被害を未然に防ぐ方法、パワハラが起きてしまった際の対処法などを、ブラック企業アナリストの新田龍氏が5つの項目にまとめて解説する。
3.パワハラになるケース/ならないケースを知る
前回の記事で「職場のパワーハラスメントの6類型」として(1)身体的な攻撃、(2)精神的な攻撃、(3)人間関係からの切り離し、(4)過大な要求、(5)過小な要求、(6)個の侵害を挙げた(厚生労働省雇用環境・均等局公式「あかるい職場応援団」より)。
これらを具体的に、オフィスでの日常的な場面を想定して「パワハラに該当するケース」と「該当しないケース」を説明しておこう。
(1)身体的な攻撃
殴る・蹴るなどの身体的暴力はもちろんだが、「書類を投げつける」などの行為も、相手を威嚇する意図があればパワハラに該当する。また、他の5種類は「反復性」が問われるが、暴行・傷害の場合は一度でも行われればパワハラとなる。
一方、「誤ってぶつかってしまった」などの過失であれば、パワハラには当たらない。
(2)精神的な攻撃
必要以上に長時間の叱責をしたり、衆人環視の中で大声かつ威圧的な叱責をしたりすること。テレワーク環境下では、全員が閲覧できるチャットルームや一斉メールで、特定従業員の人格・能力の否定や罵倒する内容を送信するなどの行為が該当する。
一方、遅刻を繰り返すなど社会的ルールから外れた労働者に対して、再三注意しても改善されないために一定程度強く忠告することや、その企業の業務内容や性質などに照らし、重要な問題行動をした労働者に一定程度強く注意するなどは、パワハラには当たらない。
(3)人間関係からの切り離し
特定の従業員に対し、集団で無視して孤立させたり、恣意的な事由で仕事から外して別室に隔離したりすること。テレワーク環境下では、オンライン会議に特定の従業員を招待しない、特定の従業員からの連絡に応じず無視する、出社日などに特定従業員だけ出社させず、在宅勤務を強要するなどの行為が該当する。
一方、新規採用の労働者を育成するため、短期間集中的に別室で研修などの教育を実施する、懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対して、通常業務に復帰させる前に一時的に別室で必要な研修を受けさせるなどは、パワハラに当たらない。
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