「中小企業淘汰論」はなぜ“炎上”しにくくなったのか 日本に残された時間:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
「中小企業は減らしたほうがいいよ」――。こうした「中小企業淘汰論」を掲げても、ネット上で炎上しにくくなっている。数年前であれば、すぐに燃えていたのに、なぜ話題になりにくくなったのか。背景にあるのは……。
われわれに残された社会
と言ってみたものの、やはりいまだに日本社会では、中小企業再編に手をつけることに難色を示す人は多い。
「もっと成長をすべき」というと、「みんながみんな成長しなければいけないのか」「小さい会社のままで商売をする自由もあるだろ」とか言って、潰れそうな老舗企業とか「極端な事例」を引っ張り出してくることもある。
だが、急速に人口が減っている日本では、1人当たりの「稼ぐ力」を上げていかなければ、急速に貧しくなっていくだけだ。それは「米国の新自由主義」とか「日本の伝統が破壊される」とかいうイデオロギー的な話ではなく、労働生産人口と消費人口という数字に基づく科学の話だ。
日本人の間で「中小企業淘汰論」という誤解が解消されて、中小企業の再編・統合が進んでいくのが先か、それとも日本の「衰退」が先か――。いずれにせよ、われわれに残された時間はもうそんなにない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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