「中小企業淘汰論」はなぜ“炎上”しにくくなったのか 日本に残された時間:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
「中小企業は減らしたほうがいいよ」――。こうした「中小企業淘汰論」を掲げても、ネット上で炎上しにくくなっている。数年前であれば、すぐに燃えていたのに、なぜ話題になりにくくなったのか。背景にあるのは……。
日本は「逆走」
先進国の中には日本よりはるかに高い消費税を導入しているにもかかわらず、着々と賃上げをして、経済成長を果たしている国も少なくない。貧困層や零細企業を助けるために期限を区切って減税をすることはあるが、消費税によって一国の経済がめちゃくちゃになるというような発想はない。
消費税を廃止するとか安くしても、消費そのものが弱ければなんの意味もない。だから、世界では消費税という上っ面な問題ではなく、賃金を着々と上げて、消費を冷やさないことの方に注力を入れるのだ。
しかし、日本はこの「逆」を突っ走っている。中小企業が潰れるので賃金はなるべく低く抑えたまま、消費税をゼロにしろと言っている。この世界的なインフレの中で、庶民が低賃金のままで消費もへったくれもない。
ちょっと冷静に考えればおかしいことはすぐに分かるが、「賃金をなるべく上げない」をすべての思考の基準になっているので、「消費税廃止」で一発逆転できるという科学的根拠ゼロの話に飛びついてしまっている。
ちなみに、これは日本人の典型的な「負けパターン」だ。太平洋戦争のときも、「とにかく国体維持のために日本は降伏できない」がすべての思考の基準となってしまったので、「神風特攻」や「戦艦大和」で一気に戦局を逆転できるという科学的根拠ゼロの話に多くの人が飛びついたが、まったく同じ構造だ。
このような日本のシビアな現実が、この3年弱の間、次々とわれわれに突きつけられたことで、「中小企業を守れば日本経済は安泰」という「常識」に、「なんかおかしくない?」と懐疑的な人が増えているのではないか。
それが今回の櫻田代表幹事の「中小企業を減らすべき」発言が、3年前ほど炎上したなかった最大の理由なのではないか。
関連記事
- 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「オレが若いころは」「マネジメント=管理」と思っている上司が、ダメダメな理由
「オレが若いころは……」「マネジメントとは管理することだ」といったことを言う上司がいるが、こうした人たちは本当にマネジメントができているのだろうか。日本マイクロソフトで業務執行役員を務めた澤円氏は「そうしたマネージャーは、その職を降りたほうがいい」という。なぜかというと……。 - なぜ某カフェチェーンは時給を上げないのか 「安いニッポン」の根本的な原因
アルバイトの応募が少ない――。某カフェチェーンから、このような嘆きの声が聞こえてきた。人口減少の問題もあるだろうが、なぜバイトが集まらないのか。その理由は……。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - 「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケ
定年を引き上げるニュースが相次いでる。現行の60歳から65歳にする企業が増えてきているわけだが、筆者の窪田氏はこの動きに懸念を抱いている。「長く働くことができていいじゃないか」と思われたかもしれないが……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.