米国フィンテック市場、成長する新興企業VS. メガバンク:勝者はどっちだ(5/5 ページ)
米国の「個人間送金市場」が盛り上がっている。成長を続ける新興企業と既存銀行による激しい覇権争いが繰り広げられているのだ。さて、現時点の“勝者”は……。
Venmoを猛追
・システム開発パートナーを通じた参加銀行拡大
Zelleに参加するためには、自分たちでシステムを接続しなければいけませんが、規模の小さな銀行や信用組合ではシステム開発リソースを準備できないかもしれません。そんな場合はZelleが指定する決済システム会社に、Zelleへの接続を依頼することもできます。
これらの戦略が奏功し、Zelleは先行していたVenmoを猛追して、取り扱いボリュームを拡大しています。
22年にはユーザー数、送金金額の両面で、ZelleがVenmoを凌駕(りょうが)している状況です。
Zelleは手数料を完全無料としていることもあり、利用がどれだけ伸びても各銀行の収益にはなりませんが、Zelleは(少なくとも現時点では)見事にVenmoという巨大新興企業を押さえて、個人間送金市場のデジタル化、オンライン化をリードする存在へと脱皮しています。
ここ日本においても、さまざまな業界で今後ますますサービスのデジタル化が進んでいくと想定されます。伝統的な企業でありながらもデジタルの世界で成長を続けるZelleの戦略は、日本の大企業にとっても一つのヒントになるのではないでしょうか。
著者プロフィール:中山悠介
三井物産株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、2017年にGMOペイメントゲートウェイ株式会社に入社。現在は、執行役員、企業価値創造戦略統括本部、経営企画・新領域創造部 部長
Fintech領域における革新的ビジネスの企画・創出がミッションの一つ。次世代ビジネスの種まきのため、社内での新規事業インキュベーションだけでなく、M&A、スタートアップ投資、大手企業とのアライアンス構築など幅広く活動している。趣味は博物館、水族館、科学館などの「館」めぐり。
埼玉県立浦和高等学校、京都大学経済学部卒
関連記事
- 「旧統一教会」は海外でどんなビジネスをしているのか “見逃せない”事実に迫る
安倍晋三元首相の暗殺事件に絡み、あらためてクローズアップされた旧統一教会。海外での報道も見ると、日本としては看過できない話も出ている。それは……。 - サブスクを成功させるか、失敗させるか、キモは「3+1」
多くの企業がサブスクビジネスを始めている。当初の目標を達成できずに苦しんでいるところも多いようだが、どこに問題があるのか。成功事例をひも解くと、共通点が見えてきて……。 - タイム誌初の「世界の企業100選」 日本企業は入ったのか?
米国のタイム誌がビジネスパーソン必見の特集を組んでいた。特集名は「世界でもっとも影響力のある100社」。どんな企業が選ばれていたのか、日本の企業は……? - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケ
定年を引き上げるニュースが相次いでる。現行の60歳から65歳にする企業が増えてきているわけだが、筆者の窪田氏はこの動きに懸念を抱いている。「長く働くことができていいじゃないか」と思われたかもしれないが……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.