「面接官の履歴書」学生に提示――デジタルハリウッドが新たな採用スタイル導入 狙いは?:新卒採用市場を占う試金石に(2/3 ページ)
企業の新卒採用といえば、応募する学生が履歴書を作成して企業に提出するのが一般的だ。そんな従来の在り方を覆す、新たな採用スタイルを取り始めた企業がある。大学事業などを手掛けるデジタルハリウッド(東京都千代田区)だ。学生だけでなく、面接官も履歴書を作成し、面接試験の数日前に学生に共有する。一体、どのような経緯から始めたのだろうか。
学生と企業「情報の非対称性」に違和感
同社は1994年にクリエイター養成スクールとして設立。eラーニングによる通信講座「デジハリ・オンラインスクール」を展開するほか、04年には「デジタルハリウッド大学院」(専門職大学院)、翌年4月には「デジタルハリウッド大学」を開学し、これまでに9万人以上の卒業生を輩出している。
「面接官の履歴書」を発案した理由はこれ以外にもある。山本さんは以前より、学生と企業の間にある「情報の非対称性」に違和感を覚えてきたという。
「企業側は学生の情報を知っているのに、学生は面接官の下の名前さえ知らされていない。よくよく考えるとおかしいなと思いました」
同社の採用フローは、一次面接、二次は自己紹介動画の提出、そして最終の役員面接――という3つのステップを踏む。面接官の履歴書は、一次面接の前々日にリマインドメールと合わせて学生に共有する。
同社の23年卒採用には約350人がエントリーし、このうち約3分の1が一次面接を受験した。学生の中には、事前に共有した面接官2人のプロフィールを熱心に読み込んでくる学生や、面接官のキャリアを意識して教育業界全般について質問してくる学生の姿も見られたという。
「面接官の履歴書を通じて、学生のコミュニケーションの取り方や人との向き合い方が見えてきたのはとてもよかったです」と新卒採用を担当する広報室の清水流花(るか)さんは振り返る。
同社は今年1月、透明性の高い採用活動を実現することを目指し、「7つの採用ポリシー」を公表した。「面接官のプロフィールを学生に提示する」という項目のほかにも、「顔写真を求めない、性別の選択項目をつくらない」「一次面接で合否判定はせず相互理解を目的とする」――などとうたっている。
実際に、昨年の採用試験から、学生に提出してもらう履歴書には顔写真・性別の記載を求めていないほか、一次面接では合否を決めず、全員を二次試験(自己紹介動画の提出)へ進めさせる。合否判定が出るのは二次試験からとなる。
山本さんは「単に合否の結果だけが残る採用試験は設計思想としてよくない。一緒に会話したからには、学生が自分のことや世の中のことについて、何か発見があるという状態で終わるのが理想的です」と話す。
一次面接では全ての学生と約1時間、みっちり話をする。その分、採用する側の負担は重くなる。「負担が重いのは確かですが、学生の話をしっかり聞くことは、大学事業を展開する私たちの本業のマーケティングにも間接的に生きてくる部分があります」と山本さんは話す。
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