ネットスーパー戦国時代 イオンに西友、Uberも参戦 勝ち抜くために必要なのは?:配送料が一つのカギに(2/3 ページ)
コロナ禍、非接触・非対面を実現するためにさまざまなソリューションが生まれた。その中でもネットスーパーは大きく飛躍したビジネスの一つだろう。コロナ禍で人々の生活に定着しつつあるが、飛び抜けたプレイヤーはおらず、多くがしのぎを削っている状態だ。勝ち抜くために必要な条件は?
テクノロジーのイオン、配送料のUber
19年にイオンがオカドと提携し、物流センターの建設をスタートしたことに象徴されるように、黒字化を狙う場合、効率化の追求によってコストカットを実現するという考え方は重要だ。イオンの巨大物流拠点においては、ロボットが24時間稼働し、50点の商品を約6分でピッキングから配送準備まで完了させられるという。
楽天と西友が協働で運営する「楽天西友ネットスーパー」も専用物流倉庫を拡充する見込みであり、千葉県柏市、神奈川県横浜市の拠点に続き、千葉県松戸市にも新センターを構える動きだ。配送エリアの拡大、受注可能件数の増大に加え、大幅な省人化を企図する。以前からネットスーパー各社はセンター出荷型の採用や店舗バックヤードの効率化に取り組んできた。楽天西友ネットスーパーは20年1月、新たに設置する物流センターで約60%の省人化を図るとの方針を示している。
Uber Eats Marketの存在にも注目が集まる。Uber Eatsの新しい食品・日用品専門店としてその第1号店「日本橋兜町店」が、 21年12月に営業を開始した。Uber Eatsの配達パートナーが、注文を受けた商品を自社の倉庫からピックアップし、指定の場所まで配達する仕組みだ。取扱商品は約1100点以上。食品、美容・衛生用品、日用雑貨に加え、生鮮食品や冷蔵・冷凍食品をそろえている。営業時間も午前7時〜午前0時までと長い。また、エリアを限定しているという理由が大きいものの、注文から最短30分程度で商品が届くという利便性も持ち合わせている。22年7月現在、日本橋兜町店に加え、世田谷赤提店、神宮前店と東京都内で配達網を拡大している。
日本では配送料を支払う価値観が十分に根付いていないことが、大手ネットスーパー各社にとって黒字化を阻害する一要因になっている。しかし、Uber Eatsのプラットフォームを適用する以上、配送料に対する心的ハードルが低い若年顧客層を既に囲い込めているのは大きな強みといえるだろう。一方で中年層、高齢者層へのサービス普及が困難であることも予想される。一般的なネットスーパーの利用者に対して同じようなビジネスモデルが通用するわけではないというのは、注意が必要なポイントだろう。
店舗でのオフライン購買でもなければ個別宅への配送でもない、「第3の買い方」を提唱し、ビジネスモデルの転換を図るのがクックパッドだ。コンビニ、マンションだけではなく、オフィスやカラオケなどにも設置された共同の「冷蔵庫」に商品を届ける生鮮食品ECを立ち上げた。アプリで注文した商品が各地に設置された「マートステーション」に配送される仕組みで、ユーザーは指定したマートステーションで商品を受け取る。個別宅への配送は配送網の整備という点で煩雑さを伴う。それを取り除くことで「配送料無料」を実現した。
マイナビニュースが運営するTECH+の21年12月14日付けの記事によると、20年の1年間だけで利用者数は10倍以上に増加したという。
関連記事
- 今こそ、小売店舗改革 メーカーと消費者に選ばれ続ける「売り場」を実現する3つの視点
メーカーと小売企業の関係性が少しずつ変わり始めている。メーカーは店頭販売への依存度を減らし、通販サイトやD2Cなどのオンライン販売強化に急ぐ。店舗の「売れる棚の取り合い」よりも「インターネット上でどう勝ち抜くか」の比重が高まっているのだ。「売り場」の力をメーカーに訴求するために小売企業はどのような取り組みをすべきか? - 1年越しに人気急上昇、コスメ自販機「KATE iCON BOX」 花王も驚愕「予想外です」
「1年前に出したのに、ここにきての急な人気は予想外です」──と、花王の社員も驚いたのは、化粧品ブランドのKATEが開発した「KATE iCON BOX」だ。KATE iCON BOXは、AIによる顔の印象分析をもとに、一人一人に合わせた4色のアイシャドウを提案し、自動販売機のように商品が出てくる機械。2021年9月に店頭での運用を始め、メーク好きを中心に話題になっていたが、サービス開始1年を目前に人気が急拡大しているという。 - 謎のロボット、ディズニーが特許取得 お土産を持ち歩く必要がなくなる?
ウォルト・ディズニー・カンパニーがユニークな特許を取得した。その名は「ロボット・シェルパ」。どんなロボットかというと……? - レジ真上に巨大ディスプレイ、広告配信すると売上2割アップ ファミマが推し進める「第3のメディア」戦略
ファミリーマートのレジの真上に、巨大なディスプレイが増えている。デジタルサイネージで広告を配信した商品の売り上げが平均2割以上アップ。来年度中に対象全店舗へのデジタルサイネージ導入を目指す。 - 家電を“レンタルできる”店舗 エキュート上野に限定オープン
JR東日本クロスステーションデベロップメントカンパニーは、大日本印刷(DNP)と協業し、エキュート上野内にショールーミング店舗「&found」を期間限定でオープンする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.