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50年以上「女性は都合のいい労働力」とされている、本当のワケ河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)

正社員の平均賃金が男女で約200万円も異なるなど、賃金格差が縮まらない。女性の就業率は上がっているものの、非正規雇用者ばかりが増えている。こうした事象の背景には、「都合のいい労働力」を求める日本の構造がある。どういうことかというと……。

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 加えて、女性が多い職種で賃金が低いという「性別職業分離」という現象も、世界では淘汰されつつあるのに日本では根強く残っています。保育や介護、看護、教育の現場の多くは女性です。逆に、高度専門職に就く女性は圧倒的に少ないのです。

 OECD統計(2012)によると、大学教員の女性割合は、日本が25.2%で最下。トップのフィンランドは50.2%、他の国々も40%台が多く、最下位から2番目の韓国も34.5%です。かつて韓国も日本に近い低水準でしたが、政治分野でクオータ制を取り入れ、大学のグローバル化が急速に進んだことに伴い、躍進しました。

なぜ? 70年前と変わらない日本

 なぜ、女性の賃金は低いのか? なぜ、多くの女性たちが非正規で雇用されているのか?

 その理由はつまり、日本は70年前と変わっていないから。「変わりたくない」が本音なのです。

 高度成長に突入した1950年代、日本では「臨時工」を増やしてきた歴史があります。

 臨時工は今でいう非正規で、企業は正規雇用=本工より賃金の安い臨時工を増やすことで生産性を向上させていました。臨時工の低賃金と不安定さは労働法上の争点として繰り返し議論され、大きな社会問題に発展しました。

 そこで政府は66年に「不安定な雇用状態の是正を図るため、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策を充実すること」を基本方針に掲げ、「不安定な雇用者の減少」「賃金等の差別撤廃」を政策目標にしました。

 ところが、70年代になると人手不足解消に臨時工を本工として登用する企業が相次ぎ、臨時工問題は自然消滅します。その一方で、主婦を「パート」として安い賃金で雇う企業が増えた。


「都合のいい労働力」が臨時工からパートの女性に(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 本工と臨時工の格差問題では「家族持ちの世帯主の男性の賃金が安いのはおかしい」という声に政府も企業もなんらかの手だてを講じる必要に迫られましたが、パートは主婦だったため議論は盛り上がりませんでした。

 「本来、女性は家庭を守る存在であり、家族を養わなくてもいい人たち」という共通認識のもと、「パート=主婦の家計補助的な働き方」という分類が“当たり前”となり、賃金問題は置き去りにされてしまったのです。

 その“当たり前”は現場でパートが量的にも質的にも基幹的な存在になっても、変わらなかった。どんなに婦人団体が抗議しても「パートはしょせん主婦。男性正社員とは身分が違う」という意味不明の身分格差で反論された。社会は「変えたくなかった」のです。

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