約8割の中小企業が受発注にFAXを使用 DXが急務な中でもやめられないワケ:入金確認作業に10時間も(2/2 ページ)
「日本の中小企業の75.8%は受発注をファックスでやり取りしている」――そんな結果が明らかになった。DXが叫ばれている中、なぜ中小企業のファックス使用はなくならないのか?
ファックスならではのメリットとは?
筆者は社会保険労務士になる前、印刷会社に勤務していました。そのためファックスならでの利便性については理解しています。最終稿は、画面で確認するより紙でじっくり校正したいというクライアントもいました。ファックスで送れば、メールで送ったデータを印刷する手間を省けます。相手がPCを持っていない場所にいるときなどもファックスで送れば確認することができます。
またメールの場合は送信しても相手に届いていなかったり、相手が気付かなかったりする可能性がありますが、ファックスは到達確認ができるため、確実に相手に届いたことが分かります。送信履歴が保存されるため、送受信に関するトラブルを避けることも可能。さらに警察や役所ではサイバー攻撃対策としてPCを外部のネットワークに接続せず、スタンドアロン(単独)で使用していたりします。そのようなケースでは、メールが使えないので情報のやりとりはファックスを使うしかありません。
とはいえ、ファックスを使った場合でも誤送信などのトラブルはあるので万全というわけではありません。今日のビジネスパーソンであればノートPCを持ち歩いている人も多いですし、スマ−トフォンでもPDFなどのデータを見ることができるため、ファックスならではの利点は薄れつつあります。
むしろメールでやり取りしたほうが、情報の共有や再利用というメリットがあります。従って、民間のビジネスシーンでは利便性を重視すべきです。実際、筆者が在籍していた印刷会社でも校正のやりとりはファックスよりもメールのほうが情報の共有や再利用の点で優れていると判明したので、ファックスでのやりとりはほぼなくなりました。
脱FAXの第1歩は日常業務の切り分けから
最近では、ファックスをサーバーに振り分けたり、電子化したりするDXツールを目にすることもあります。日本独自のガラパゴスな製品がDXの分野にも登場しているといえるでしょう。しかしながら企業は、役所とのやり取りなど特殊な事例を除き、ファクスを使う業務の削減に努めた方ががよいと筆者は考えます。受信した情報をPCに再入力するケースがあるように、ファックスでの情報のやり取りはデータの再利用という観点では、著しく効率が悪いからです。過去の記録を参照するような場合も紙で保管しておいたほうが一見早そうに思われますが、データ化して検索をかければ数秒で辿りつきます。
年に1回発生するかどうかわらない非定型業務はともかくとして、毎月の定型業務にファックスを使用する非効率性は自明のことでしょう。定型業務にも関わらずファックスでやりとりしている業務があれば、メールに置き換えられないか検討すべきです。法人であれ個人であれ、今日、メールアドレスをもっていない人は少数。提案すれば案外、簡単に受け入れてもらえると思われます。
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