ウナギのチェーン店が急増中! 価格が高騰しているのに、売り上げが好調な理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)
コロナ禍に入ってから、ウナギのチェーン店が急増している。ウナギのファストフード「名代 宇奈とと」は、約2年で店舗数が7倍に増えた。一方、高級なウナギ料理を提供するチェーン店の存在感も増している。
安価で提供できる理由
店舗を急拡大して、ウナギの調達は大丈夫なのかと心配になるが、同社によれば「商社を通じて一括購入している」とのこと。計画に従って、仕入れている。ウナギは中国産だ。中国の工場であらかじめウナギを開き、焼いた状態で、各店に届けられる。だから安価で提供できるのだ。お店では、焼き担当のスタッフが備長炭の炭火で炙り、香ばしく仕上げる。注文を受けてから両面を約3分焼き、提供する。うな丼で「安い・早い・旨い」を実現している。
ところでウナギの調理は、非常にシビアな職人の世界で、「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」といわれる。宇奈ととでは、あらかじめ中国の工場で、ウナギを裂くなどの下準備を行った上で、お店に届ける。そして、サイズに個体差があるウナギを挟んで均等に焼ける、炭火焼専用の網を開発。この特製の網のおかげで、3日もあれば素人でも焼き方を習得でき、満足に焼けるようになるという。
ウナギ料理の常識を打ち破り、職人要らずのシステムを構築したからこそ、アルバイトに仕事を任せられる、ウナギのファストフードが誕生したのだ。
顧客層は立地によって異なる。浅草店なら観光客、郊外の調布店なら主婦、オフィス街の新宿センタービル店ならオフィスワーカーが、それぞれ中心となる。
東京の上野店・錦糸町店・立川店、大阪の南森町店のような盛り場立地の店では、ウナギ以外のおつまみも含めたちょい飲みメニューに力を入れており、夜はウナギ居酒屋として利用できるようにしている。立地に合わせた業態開発を行ってきたのが、宇奈ととの強みとなっている。
このように、従来は直営で手堅く運営してきた。しかし、G-FACTORYの本業である飲食店の経営サポートを行っていく中で、コロナ禍で時短を余儀なくされ、集客が落ち込む居酒屋になんとかにぎわいをもたらせないかと考えたのが、宇奈ととのライセンス契約による店舗展開だ。
来店が見込めない場合は閉店を促す一方、焼鳥店のような炭火焼の焼台を有している店舗には、ウナギのテークアウト、デリバリーを始めてみないかと提案した。
テークアウト、デリバリーに特化した店は、実店舗を持たないゴーストレストランを含めて34店に上る。
また、「やきとりの扇屋」などの飲食店を経営するヴィア・ホールディングス(東京都新宿区)と、焼鳥とウナギの両方が楽しめる、ダブルネームのコラボレーション店を推進。 「オオギヤと宇奈とと」は、21年9月に一挙6店がオープン。その後も出店が加速し、35店にまで増えた。
このように宇奈ととは、G-FACTORYの経営コンサルティングと一体となって、コロナ禍で店舗を急拡大させたところに独自性がある。
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