「さようなら、監獄レストラン」 なぜ23年も運営できたのか:水曜日に「へえ」な話(3/4 ページ)
「監獄レストラン ザ・ロックアップ」が7月31日に閉店した。「不気味さ」や「怖さ」を売りにしたエンタメ系のレストランは、なぜ閉店したのだろうか。運営元を取材したところ……。
閉店に追い込まれた要因
ロックアップではさまざまなイベントを開催していて、その中で最も人気があったのは「ハロウィンイベント」である。ハロウィン当日の10月31日、新宿店だけで500人以上が来店して、200万円ほど売り上げたことも。
全国に店を増やしていって、売り上げもまずまずだったのに、なぜ閉店に追い込まれたのか。決定的な要因は、新型コロナの感染拡大である。
緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を繰り返しているときには、以前のようにイベントを実施することが難しくなっていた。宣言が解除されて再開したものの、感染の広がりによって途中で打ち切りになることも。2020年はほぼ休業していて、21年に営業できたのは4カ月ほど。そんな状態が続いていたので、客も「ロックアップはやっているのかな」などと感じて、足が少しずつ遠のいてしまうことに。
収益面で苦しめられたのは、売り上げの減少だけでなく、人件費の負担も大きかった。モンスターショーは2時間に1回ほど行っているので、そのぶんのスタッフを用意しなければいけない。客がたくさん入っていても、あまり入っていなくても、ショーは開催しなければいけない。ということもあって、「コロナの感染者増=客数減=人件費の負担が増」といった公式ができあがってしまったのだ。
大阪や名古屋の店が撤退していく中で、なぜ新宿の店が最後まで残ったのかというと、休業中にスタッフが他店を手伝っていたからである。GYRO HOLDINGSはさまざまな飲食店を運営しているので、ランチの時間に手伝ってもらったり、デリバリーの仕事をしてもらったりして、なんとか回すことができた。
「じゃあ、他のロックアップの店も同じようにすれば、大丈夫だったのでは?」と思われたかもしれないが、話はそれほど単純ではない。新宿にはグループの店が近くにあるので、スタッフはそこで働くことができた。しかし、他のロックアップには近くに店がなかったので、人を効率よく回すことができなかったのだ。
ひとつまたひとつ、店が閉じられていく中で、最後に残ったのが新宿店だった。「監獄は個室なので、ソーシャルディスタンスは保たれています。また、モンスターの覆面はフェイスシールドの代わりになっていたので、感染しにくい環境だったとは思うのですが、長期間休業の影響は大きく、閉店という決断に至りました」(設樂さん)
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