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地方の「超高層ビルマウント」に習政権激怒、500メートル以上のビル建設禁止に:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/5 ページ)
高層ビルは都市にとって発展のシンボルだ。そして20世紀の超高層ビルは米国に集中していた。しかし2022年時点で、世界の高層ビルトップ10の半分は中国にある。中国政府は、虚栄心やマウントのために地方にさえ超高層ビルが次々に建築される状況に、神経をとがらせている。
500メートルすれすれのビルが次々建設
経済成長が続く中国では、2010年代に超高層ビルが続々と建てられた。
国際NPOの高層ビル・都市居住協議会によると、高さ500メートル以上のビルは世界に10棟あるが、うち5棟が中国本土に立地する。トップ100に広げても、49棟を中国(香港含む)が占める。
北京青年報の報道によると、中国には高さ150メートル以上のビルが2581棟、200メートル以上の超高層建築物が861棟。
ちなみに日本で最も高いビルはあべのハルカス(大阪)で300メートル。200メートルだと東京・大手町の読売新聞ビルなど複数ある。
中国の超高層ビルの建設ラッシュは止む気配がなく、同メディアは「22年に建設中の世界の超高層ビル上位25棟のうち20棟が中国」とも指摘する。そしてそれらの多くは、500メートル規制すれすれの高さとなっている。
25年に完成予定の「緑地金茂国際金融中心」(南京)は高さ499.8メートル、地上104階。「蘇州中南中心」(蘇州)は高さ499.15メートル、地上103階、地下6階。
そして28年完成予定の「河西魚嘴金融中心」(南京)は498.8メートル。実はこれらのビルの大半は、20年の「500メートル規制」を受けて、建築の途中で高さを削ることになった。蘇州中南中心は着工時には中国一高い729メートルのビルを目指していた。
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