「サイゼリヤで満足=貧しい」のか 残念ながら“事実”であるワケ:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
サイゼリヤ論争が盛り上がっている。『サイゼリヤで満足することは「貧しい」ことなのか?』といったテーマが語られているが、消費者はどのように受け止めているのだろうか。筆者の窪田氏は、一票を投じていて……。
貧しくなっていくスピードが「速い」
だから、諸外国では中小企業の成長を促すために、国や自治体が定期的に最低賃金を引き上げていくのが常識となっている。しかし、日本ではなぜか「企業の賃上げに国が介入しないほうがいい。景気が良くなれば賃金は自然に上がっていく」という珍妙な主張のほうが説得力をもって語られる。
自発的に賃上げをできる大企業など、日本企業のわずか0.3%にしか過ぎないのに、なぜかそのような大企業のロジックで、99.7%の中小企業まで賃上げできるという「妄想」に取りつかれているのだ。
これほど貧しくなっているのに、いまだに日本では「最低賃金の引き上げなど意味がない」「賃金の引き上げなどより消費税をゼロに!」「終身雇用をなくして実力主義が根づけば、自然に賃金など上がっていく」というような、恐ろしいほど楽観的な意見が多い。
その一方で、サイゼリヤのような「低賃金労働」を前提としたビジネスモデルが未来永劫続いてもらうことを願う声も多い。もはや「一億総貧困化」に歯止めがかからない状態だ。
サイゼリヤのような「安くておいしい外食」などを引き合いに、「日本スゴい」「外国人が称賛」という自画自賛をよく聞くが、実は本当にスゴいのは、貧しくなっていくスピードのほうかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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