エンジンオイルの交換サイクルはなぜ延びた? 実は100%の化学合成油が存在しない理由:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
オイルの交換サイクルが長いのは、以前よりもクルマの品質や耐久性が高まっていることに対して、クルマの寿命とのバランスを取る目的もありそうだ。つまり、10年程度でクルマをリサイクルすることを前提にエンジンの摩耗を緩やかに進めていくことも図っているという見方だ。
どうやってオイルの交換サイクルを延ばしたのか
エンジン自体も高精度になることで、オイルの劣化は抑制することに寄与する(もっとも昨今の直噴エンジンは、PM=粒状化物質=黒煙がオイルを汚す)が、エンジンオイル自体も高性能で耐久性の高いものとしているから、交換サイクルを延ばすことができている。そもそもオイル交換のサイクルを延ばしたのは、環境問題から廃油を減らそうという目的が発端だ。さらに車体の軽量化を進めるためのオイル量削減と合わせて、エンジンオイルにとってはますます厳しい環境へと追いやられてしまっている。
その上でオイルの交換サイクルが長いのは、以前よりもクルマの品質や耐久性が高まっていることに対して、クルマの寿命とのバランスを取る目的もありそうだ。つまり、10年程度でクルマをリサイクルすることを前提にエンジンの摩耗を緩やかに進めていくことも図っているという見方だ。
車体や内装がヤレてしまっても、エンジンだけが好調さを維持できていればいい、というのはクルマの設計寿命からすればアンバランスとなる。それはユーザーに無駄な出費をさせていることにもつながるから、工業製品としてはよろしくない、という判断をされてしまうことになる。
エンジンオイルの交換サイクルが延びたのは、廃油を減らすだけでなくクルマの寿命を踏まえてエンジンも緩やかに消耗させて、資源を無駄なく使いリサイクルさせるための手段にもなっている。そう考えれば、渋滞などのシビアコンディションでもオイル交換を怠ってしまうのは、走行距離から考えればエンジンの消耗を早めてしまうことになるが、経年劣化としてはそう不自然なほど酷くはない。
そう、年間の走行距離が少なくてもクルマは劣化していくものであり、クルマの寿命は走行距離だけでは決まらないからだ。
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