2015年7月27日以前の記事
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エンジンオイルの交換サイクルはなぜ延びた? 実は100%の化学合成油が存在しない理由高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)

オイルの交換サイクルが長いのは、以前よりもクルマの品質や耐久性が高まっていることに対して、クルマの寿命とのバランスを取る目的もありそうだ。つまり、10年程度でクルマをリサイクルすることを前提にエンジンの摩耗を緩やかに進めていくことも図っているという見方だ。

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エンジンオイルの性能は添加剤が決める?

 エンジンオイルの性能は、添加剤によって大きく影響を受ける。エンジンオイルに追加する添加剤も販売されているが、そもそもエンジンオイル自体オイルだけで構成されているわけではないのだ。

 オイルの基本性能を高める粘度指数向上剤やFM(摩擦改善)剤、エンジン内部のカーボンやデポジットを取り込んで分解させる清浄剤と分散剤はかなりの割合で配合されているが、それ以外にもさまざまな添加剤が使われている。

 エンジンオイルには実にたくさんの添加剤が投入されている。添加剤メーカーによってそれはいくつかのパッケージ化されており、だいたいエンジンオイルの2〜3割は添加剤が占めているといわれている。

 今やエンジンオイルはオイルメーカーではなく添加剤メーカーが主導権を握っていると言ってもいいくらい、添加剤はエンジンオイルにとって無くてはならない存在だ。

 添加剤の中には、意外とも思える消泡剤というものがある。文字通り泡、気泡を解消させるためのものだ。別に泡くらい発生してもどうということはないと思われるかもしれないが、実はエンジン内部でオイルが泡立ってしまうといろいろ面倒なことが起こる。オイルはエンジン内部で冷却も受け持っているが、泡は熱伝導を低下させてしまうので、その役目を阻害するのだ。

 またオイルポンプによって圧送される油圧も気泡により低下してしまう。油圧は、油膜を維持するために必要なものだが、泡を吸い込んでしまうと圧縮時に圧力を気泡が吸収してしまうのだ。

 またオイル表面を泡状のオイルが覆ってしまうと、クランクシャフトとコンロッドで表面を叩くことによって周辺に飛沫させて潤滑させる効果も発揮しにくくなってしまうため、オイル内部でも表面でも気泡はなるべく少なくしたい。

 そんなことから消泡剤が添加される。エンジン内部で盛大に攪拌(かくはん)され、熱も加えられることによって気泡が発生しやすい状況でも、エンジンオイルは泡立ちを極力抑えているのである。


エンジンオイルは、エンジン内部でさまざまな役割をもっている。潤滑、冷却はもちろんのこと、燃焼によって発生するカーボンやデポジットを取り込んでエンジン内部をクリーンに保つ清浄分散……。油圧自体を吸排気バルブの開閉タイミングを変化させるためにも使われるなど、まさに液体のもてる特性すべてを活用しているのだ

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