「今のオフィスは丸ごと捨てる!」 財務省出身の社長が力づくで働き方を改革したワケ(3/5 ページ)
省庁を退職し、民間企業に招かれ取締役になる――これだけならよく聞く“天下り”の話だ。しかし、招かれた企業で時に反感を買いながらも、強力にペーパーレス化、働き方改革を推し進めているとなると、単なる天下りとは言えないだろう。財務省出身の日本電算企画・横江社長が実施した“力づくの働き方改革”とは?
改革を支えた、役人時代の経験
横江氏が、入社間もない日本電算企画でこうした改革を推し進められたのはなぜか。それは、省庁でも長期間にわたり業務改革に携わってきた経験があるからだ。
1989年に大蔵省に入省した横江氏の役人としてのキャリアは、官庁会計システム「ADAMS(アダムス)」とともにある。ADAMSとは、行政改革の取り組みとして、当時の大蔵省(現財務省)が導入を進めていた、国の会計処理を電子化するものだ。
「私は理系でもないし、当時、情報工学を勉強してる人もほとんどいませんでした。最初はちんぷんかんぷん。それこそ用語辞典を見ながら仕事をする状況からスタートしました」
与えられたミッションは、全省庁の地方出先機関の会計処理を、全て同じシステムで統一すること。プロジェクトマネジャーに近い立場で中央省庁の情報システム業務に携わり、役人務めの28年のうち23年間はシステム関連の仕事をしていたという。
ADAMSを各省庁の出先機関全てに導入したことで、会計処理の情報が一カ所に集まるようになった。それにより、当時は7月に着手し翌年2月までかかっていた国会への国の決算書の作成・提出が、3カ月早く11月には提出できるようになった。
ADAMS導入をやり遂げた後は、一息つく暇もなく総務省に出向。現在デジタル庁になった内閣官房のIT戦略室で、府省の共通のシステム基盤を作る業務に携わった。しかし、これについては、あまりうまく進められなかったという。
「行政機関の仕事は業務特性が非常に強く、各省庁、唯一無二に近い業務をやっています。それを共通基盤上で共通機能を使って、みんな一緒にシステムやハードを使っていきましょうという考え方は、なかなか馴染まない。また、霞ヶ関の中のパワーバランスも感じましたね」
もう1つ、横江氏が苦労したことは技術革新の速さだ。
「情報をきちんと把握しながらやっていかないと、考えて作って出来上がった時には時代遅れになってしまいます」
例えば、通常予算の要求は2年前から用意。調達についても手続きだけで半年以上かかるものもあり、システムが出来上がる頃には、次の新しい技術が登場しているという事態だった。当時はPCの機能も進化が目覚ましく、通信回線はADSLから光に変わる頃。システムを整えつつ次期システムについても検討していくが、技術の進化とシステム更改のタイミングがなかなか重ならず、苦労は絶えなかったという。
「自分でしっかり情報知識を持った上で、早め早めに手を打っておかないと、出来上がった時には、もう次のことをすぐ考えなきゃいけない。休む間も、気を抜いてる時も、一息つく暇もない。こんなことは良くないと思って、ライフサイクルのことも含めて、どうしていくかを考えてやってきましたが、あっという間の30年弱でした」
横江氏がADAMSに取り組んでいた財務省の組織は「会計センター」で、内部の局ではなく外局だ。花形部門の主計局ではなく、出世街道からは外れている。同僚には「なぜ会計センター?」と言われたそうだが、横江氏自身はやりがいを感じていた。
「自分で考え、物事を整理してシステムを作り、みんなのためになるものを作っていけることをずっと経験したので、そちらの方が楽しいし、充実感もありました」
その延長線上で、「勘定系システムをやっている会社であれば、さまざまな提案ができ、みんなが楽になる仕事を続けられる」と考えたのが転職を決めた最大の理由だという。
その上で、転職先には大手ベンダーではなく日本電算企画を選んだ。「やりたいことは、今でも山ほどある」と話す横江氏が、一歩引いたアドバイザーではなく、会社に主体的に関わっていけると考えたからだ。
こうした役人時代の経験が花開き、日本電算企画を改革へと導いた。
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