「今のオフィスは丸ごと捨てる!」 財務省出身の社長が力づくで働き方を改革したワケ(4/5 ページ)
省庁を退職し、民間企業に招かれ取締役になる――これだけならよく聞く“天下り”の話だ。しかし、招かれた企業で時に反感を買いながらも、強力にペーパーレス化、働き方改革を推し進めているとなると、単なる天下りとは言えないだろう。財務省出身の日本電算企画・横江社長が実施した“力づくの働き方改革”とは?
社員は「流出しても良い」、それでも手厚く育てるワケ
横江氏が進めた働き方改革は、オフィス移転のみではない。特に力を入れているのが、人事関連の改革だ。
現在、横江氏は東京と長野県の2つの地域を拠点にして生活している。そうした多拠点生活に対応するだけでなく、自宅での業務が難しい社員もいるため、あらかじめ届け出ておけば自宅以外でのテレワークもできる制度を新設した。また、月単位の勤務時間で管理するフレックスタイム制にし、休暇の取得は1時間単位からできるようにした。
「コロナ禍で働き方改革が一気に進んだのは、当社だけではないでしょう。テレワークによって家族と過ごす時間も当然増えています。また、数値データ化はされていませんが、社員の勉強する時間が増えたようで、情報処理系資格の合格者数が増えてます」
情報処理試験の前には外部の講師を招き、講義をしてもらっている。資格手当の規定も作り、最大で月額5万6000円を支給する。そうすることで、特に若手社員に対し、基本的な資格を取得するよう促している。
給与体系も作り直し、SEのエキスパートコースを新設した。技術者としては超一流だが、マネジメントが苦手な人は管理職になれず昇進できない体系だったからだ。
こうすることで「総人件費が上がる」と社内で指摘されたが、「SEの会社は人が全て。適正な報酬を払うべき」との考えから断行した。
日本電算企画は労働組合のない小さな会社だが、ボーナス月の6月と12月に経営陣と社員が互いに意見交換を行っているという。横江氏がエキスパート職の体系を提案したのも、その会の中のこと。それまで若手社員は、自分が勤めていくことで、将来、給与がどの程度になるか、役職はどう上がっていくかを知る術がなかった。
そこで、俸給表を作り直すだけでなく、年齢に応じたシミュレーションモデルも作り、管理職とエキスパートのどちらの方向に進むかを決められるようにした。
「昇任昇格基準も曖昧でした。それまでは部課長からの推薦制のようなやり方で決めていました。“花いちもんめ人事”って名付けたんですが(笑)、それは好き嫌い人事になるのでダメ。客観的に評価できるシステムにしました」
このほかにも、ビジネスホテル「ドーミーイン」を展開している共立メンテナンスに相談し、地方から上京して就職する社員のために都内に寮を用意するなど、人が全てとの考えから人事系の施策を充実させてきた。
経営陣の一部からは、会社がお金を出して人を育てても、流出してしまったら無駄になると、反対意見もあったという。しかし、横江氏は「流出してもいい」という考え。人間関係のトラブルから転職を希望する人以外は引き止めない方針だ。
「流出するということは、それだけその人が優秀だということ。日本電算企画には優秀な人がいっぱいいるという評価につながり、逆に来てくれる人も出てくるのでは、と考えています。現に、中途で来てくれる人も最近増えています」
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