「今のオフィスは丸ごと捨てる!」 財務省出身の社長が力づくで働き方を改革したワケ(5/5 ページ)
省庁を退職し、民間企業に招かれ取締役になる――これだけならよく聞く“天下り”の話だ。しかし、招かれた企業で時に反感を買いながらも、強力にペーパーレス化、働き方改革を推し進めているとなると、単なる天下りとは言えないだろう。財務省出身の日本電算企画・横江社長が実施した“力づくの働き方改革”とは?
「おかしいことはおかしい」と伝える姿勢
さまざまな改革を、社員は「受け入れてきてくれている」と横江氏は話す。最近では、社員たちからのアイデアで導入した仕組みもある。例えば、社員同士が業務中の行動や結果を評価し、メッセージや報酬を贈り合うことができるピアボーナスのサービスがその一つだ。社員たちのやりとりから、現場の人間関係や社員個々人の状態が見え、コロナ禍で減ったコミュニケーションをカバーすることにも役立っていると横江氏は言う。
もちろん、これまでに社員からも改革に対する反発はあった。山あり谷ありというが、横江氏は「谷ばかり」と振り返る。さらに横江氏は自身を「じっとしていられない性格」と話す。変えられる、もっと良くできると思うことが見つかると黙っていることができないという。
そんな横江氏が取材時に計画を話してくれたのが、再度の会社の引っ越しだ。テレワークが進んで出社する社員が減り、せっかく用意したオフィスも3分の2は使われていない状態。固定費化しているランニングコストを少しでも減らし、社員の処遇に変えていくという。この引っ越しは無事、8月上旬に完了した。
こうした改革の中で、横江氏が大切にしているのは「おかしいことはおかしい」と忖度(そんたく)せずに意見を述べる姿勢だ。
「私はおかしいことはストレートにおかしいと伝える性格です。『なぜこんなやり方をしてるの?』と言い続け、これまでにほぼ全員から反発を食らいましたよ。でも、『俺は会社を変えるために来た。このままでいいと思っているんだったら来ない。ラクしたいから来るのは、いわゆる天下り。俺は違う』と伝えています」と横江氏は笑う。
働き方改革には、終わりがない。横江氏は、今後も「おかしいことはおかしい」と伝える姿勢をつらぬき、改革を進めていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──?
“スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。
延々と残業する部下に困っています どうしたらいいですか?
延々と残業する部下に困っています。残業時間を減らすように注意しても、あまり改善されません。どう対処すれば良いのでしょうか?
退職か、働かないおじさん化か──50代社員を“用済み”扱いする社会のひずみ
大手企業に勤める男性は、52歳で会社から早期退職を勧められた。さらに異動も命じられており、残された選択肢は、退職か、働かないおじさん化か──。男性のインタビューから、「働かないおじさんの問題」の正体に迫る。
アマゾンの新しい返品方法 お金を返し、商品は回収しない──なぜ?
米国は、日本に比べて返品OKの小売店が多い。米アマゾンなどの大手小売りでは、返金するのに商品は回収しない「Keep it」という新しい返品方法が進められている。なぜ、このような手法を取るのか?
