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IT駆使して人気だった「ブルースターバーガー」なぜ閉店? プロが指摘する「接客不要」の落とし穴長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/7 ページ)

外食DXの成功例としてもてはやされた「ブルースターバーガー」。完全キャッシュレス、非接触のスタイルが画期的だった。行列ができるほど人気だったのに、なぜ全店閉店に追い込まれたのか。

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プロはどう分析する?

 では、フードテックの専門家は、ブルースターバーガーの蹉跌(さてつ)をどう見ているか。

 一般社団法人レストランテック協会(東京都千代田区)の山澤修平代表理事は、「IT化とDXはよく混同されるが、ブルースターバーガーが行ったことはDXではなかった」と語る。


レストランテック協会代表理事、山澤修平氏(提供:山澤氏)

 山澤氏によれば、IT化とは、ITを使って組織の生産性を向上させること。一方で、DXはITを手段の1つとして、ビジネスモデル等を変革して競争上の優位を確立すること。ブルースターバーガーは、接客をITに置き換えて、料理に全振りの業態を構築したが、「IT化+α」の道半ばの状態。DXに到達する以前に、原材料の高騰などの想定外の外的環境変化の影響で、撤退を余儀なくされたと推察する。

 「同社のアプリは、AndroidとiOSを合わせて1万程度はインストールされている状態。そこから取得できるお客さま情報で、オンライン上でも、顧客体験を向上させることは可能だった」と、山澤氏は残念がる。

 接客面では、例えば「アマゾン・ドット・コム」をはじめとするECサイトのように、過去の注文データや性別、年齢から分析して、パーソナライズされたお勧めメニューが出せたはずだ。

 空間面では、例えば出身地データから、アプリ上に出身地域別のコミュニティーを立ち上げ、神戸牛、松阪牛など地域ブランド牛のフェアなどを企画して、生産者と交流を図ることができた。

 料理でも、パティの焼き方などの調理法をカスタマイズできれば、顧客満足度が向上した。また、大量のオーダーをさばく調理ロボットを導入すれば、従業員の負担が軽減できただろう。

 お店がオープンした頃、さばき切れない程の注文を受けて、ひたすら調理し続ける従業員の姿からは、悲壮感すら漂っていた。

 このようにITを活用しながらも、顧客と従業員の満足度を上げる発想にまで至らず、業務効率化の域に止まったのが、ブルースターバーガーがじり貧に終わった原因だと山澤氏は指摘した。


山澤氏が執筆陣に入った『これからの飲食店DXの教科書』が8月29日発売予定

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