なぜ現場で働く人が不足しているのか 「コロナのせい」ではないワケ:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
コロナに感染してしまった。濃厚接触になって出社できない。こうした理由で、「現場で人が足りない」といった悲鳴の声がでているが、原因は本当に「コロナ」なのか。筆者の窪田氏は、違う見方をしていて……。
低賃金が引き起こす問題
それをさらに深刻にしているのが、「雇用のミスマッチ」だ。
これは読んで字の如く「求人と求職のニーズが一致しない」ことなのだが、分かりやすく言ってしまうと、「きつい仕事や賃金の安い仕事には求職者がやって来ない」ことに尽きる。
今やコンビニバイトは「低賃金重労働」の代名詞となっているし、感染拡大するたびに休業だとシフトを減らせだと言われて満足に休業補償ももらえない居酒屋などの飲食店バイトは、「アルバイトで手っ取り早く稼ぎたい」と願う若者たちからは敬遠されている。
また、バス、長距離トラック、タクシーなどのドライバーは急速に高齢化が進んでいる。いろいろな原因があるが、大学や高校を卒業した若者の中で、これらの業界への就職を第一希望としているケースが少ないことも関係している。
つまり、日本の一部の業界で深刻になっている「人手不足」なるものの正体は、若年労働者の絶対数が足りていないわけではなく、それらの業界で働きたいと希望する若年労働者が不足している。身もフタもない言い方をすると、「不人気」ゆえに労働者が少ないのだ。
そういう話になると、「若者にもこの仕事の魅力を伝えるためにPRだ」とか「アニメやマンガの題材になったら人気が上がるのでは」という小手先の話になりがちだが本来、この問題を解決するには「賃金」しかない。きつい仕事だけど金払いがいい、となると若者たちの中には、「本当はもっと別の仕事がしたいけれど、夢や目標のためにがんばるか」という感じで、割り切ってその仕事に就こうと考える者たちが増えて、働いているうちにさまざまな事情から「定着」していくからだ。
しかし、ご存じのように日本は「賃金をあげたら小さな会社は潰れて、日本経済はおしまいだ」という世界ではほとんどお目にかからない独特の経済理論が常識としてまかり通っているので、とにかく「賃上げ」をしない方法を模索するので結果、「安い賃金でも文句を言わずに働く労働者」を獲得することが「正しい経営努力」となる。それが戦前の炭鉱の人手不足からスタートして、現代まで脈々と続く「外国人労働者の活用」だ。
日本人が敬遠するような低賃金でも、貧しい外国人なら喜んで働くだろう、という発想である。しかし、そのようにして100年以上も「安い賃金でも文句を言わずに働く労働者」をせっせと受け入れて、中小零細企業の経営者にとって夢のような「低賃金労働者天国」をつくってきたことが皮肉にも、日本の「働く人が足りない問題」を取り返しがつかないほど悪化させてしまっている。
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