相鉄・東急直通線、定期券の新サービスで何が変わるのか:維持するものは(3/4 ページ)
2023年3月に開業予定の相鉄・東急直通線。双方の鉄道会社にとってメリットがある新線だが、加算運賃や定期券の優遇はどうだろうか。サービス面での対応を見ていこう。
相鉄は横浜駅利用客の囲い込みを図る
似たようなことは、相鉄でも計画している。西谷〜新横浜間を含むIC通勤定期乗車券を利用している人は、西谷〜横浜間に限り追加運賃不要で横浜での乗降が可能になる。同区間での途中下車は不可である。
相鉄は「例えば、平日は相鉄新横浜線経由でラクラク通勤、休日は横浜駅周辺でお買い物、といったご利用が可能となります」と説明している。
横浜は巨大ターミナルであり、相鉄の横浜駅には商業施設「相鉄ジョイナス」がある。定期券を利用してこれまで「相鉄ジョイナス」などに買い物に行っていた人にも、不便がないようにする。通勤定期は、休日にターミナル駅に出かける際にも使われることが多いため、その利用客を逃さないために設けられた制度である。
ダイヤ乱れの際にもメリットが
また、これは通勤定期に限った話ではあるが、東急と相鉄の追加運賃不要の乗降制度を足すと、相鉄新横浜線・東急新横浜線でダイヤ乱れが起こった際に、東急東横線と相鉄線を横浜で乗り継ぎ移動する場合には、綱島〜横浜間だけの運賃で大丈夫になる。もちろん、振替輸送の対象になったときは通勤定期でも通学定期でも無償で振替が可能になるものの、対象にならない場合で(ちょっと状況があやしいと思った場合など)自主的に判断して動く場合には、運賃の負担だけで大丈夫である。
もちろん、磁気定期券では振替輸送が設定されたときにはルート変更が可能だ。運賃も必要ないが、いま磁気定期券をつくる人はほとんどいない。さまざまな利便性を理由に交通系ICカードの定期券を持つ人が増え、乗り越し精算などをしなくて済む点が多くの人に支持されているからだ。このようなケースでは、交通系ICカードの利便性がありがたいものとなる。
この新サービスで、相鉄も東急も自社沿線で営業する各施設の利用を維持でき、定期券の利便性も損なわずにすむ。加えて、新線での直通運転により一本で行き来できる新サービスを乗客に提供できる。新線を利用するインセンティブを完備しているわけだ。
関連記事
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。 - ドラえもんがつくった地下鉄は公共交通か? ローカル線問題を考える
『ドラえもん』に「地下鉄を作っちゃえ」という話がある。のび太がパパのためにつくった地下鉄は公共交通と認められるか。この話をもとに、公共交通になるための過程、利用者減少から撤退への道のりを考えてみたい。 - 2025年の大阪・関西万博で、鉄道の路線図はどうなるのか
2025年に大阪、夢洲で「2025年大阪・関西万博」が開催される。政府は主要公共交通機関に大阪メトロ中央線を位置付けた。このほか会場へのアクセスには船とバス、さらに具体化していない鉄道ルートが3つ、近畿日本鉄道の構想もある。また会場内の交通には、3種類のモビリティが計画されている。 - 不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか
鉄道ファンにとって最高の「借景」が楽しめるトレインビュールーム。名が付く前は、線路からの騒音などで不人気とされ、積極的に案内されない部屋だった。しかし鉄道ファンには滞在型リゾートとなり得る。トレインシミュレーターや鉄道ジオラマなど、ファンにうれしい設備をセットにした宿泊プランも出てきた。 - 東京メトロ「有楽町線」「南北線」の延伸で、どうなる?
東京メトロ有楽町線と南北線の延伸が決定した。コロナ禍で事業環境が大きく変化する中、東京メトロが計画する今後の戦略とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.