「水道代」100円未満も? 大阪市が実施した水道基本料の免除、全国に広がる:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
コロナ禍やウクライナ危機の長期化により、2022年は先行きの見通せない経済情勢と物価の上昇という2つの要因が家計の生活を脅かしている。足元では政府に対して、一律給付金の復活を求める声も広がりを見せつつある。しかし、一部の地方自治体では、国に先んじて家計支援に乗り出すところも出始めている。
水道料金の基本料免除、全国に広がる
このような大阪市の発表などを受けて、水道の基本料金の免除を行う自治体がじわじわと増えている。7月には、兵庫県丹波市が9〜12月にかけての水道料金の基本料金(下水道除く)を免除することを発表した。
8月には兵庫県赤穂市も9〜12月の水道基本料金(下水道除く)を免除することを発表している。他にも、今年だけで札幌市、山口県下関市、奈良県王寺市、岐阜県笠松町、栃木県宇都宮市、茨城県古河市、埼玉県和光市など、さまざまな地方自治体が水道基本料金の一律免除の導入を決定した。今後も導入自治体は増加していくものとみられる。
足元では、原油高によって火力発電にかかるコストが増加した結果、電気代の高騰も著しい。ただし、電力は民営化・自由化の流れによって、顧客構造が地域に根ざした水道と比較してかなり複雑化している現状もある。
そうであるとするならば、政府が電力事業者に補助金を付与することで、電気利用者の基本料金を減免するような施策を実施していくことが、現金の直接給付よりも一層効率的かつ効果的な家計支援策となるのではないだろうか。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCFO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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