「河原にゴミ埋め」「BBQ客が喧嘩」――キャンプ場有料化でマナー改善 企業と自治体タッグ奏功:オーバーツーリズム克服へ(2/2 ページ)
近年のキャンプブームで、無料のキャンプ場に人が殺到する「オーバーツーリズム」(観光公害)が深刻化している。こうした中、地元企業と自治体がタッグを組み、キャンプ場の有料化に踏み切るケースが相次いでいる。民間の知見を生かしたマネジメントで大きな効果が表れているという。
有料化で利用者の匿名性が解消される
岐阜県池田町は、21年6月から1年間、同町の「大津谷公園キャンプ場」の有料化に向けた実証実験を行い、7月から本格的な有料化に踏み切った。
町の担当者によると、実証実験を始める前は完全無料で、ゴミや炭が放置される事例が多く、小火が発生したこともあった。「いつ、誰がキャンプ場に来たかも把握できず、小火騒ぎが起きても泣き寝入りの状態だった」と担当者は話す。
中には、山沿いの脇に炭を捨てていく事例もあり、山火事の恐れがあるとして、近隣住民からキャンプ場を閉鎖するよう求める要望書が町に提出されたこともあったという。
これを受け、町は地元企業と手を組み、事態の改善に着手した。金融機関の「大垣共立銀行」(岐阜県大垣市)と、アウトドア専門店「ヒマラヤ」(岐阜市)と連携し、有料化に向けた実証実験を開始。同行が有料化の検証と評価を担い、同社はキャンプ場の運営・管理を担った。
キャンプ場の利用料金は、宿泊で3300円、日帰りで1650円に設定。利用はネット予約制とした。その結果、利用客のマナーは大幅に改善。「予約制にすることで利用者を把握できるようになったことが大きい」と町の担当者は話す。民間との連携によって、スピード感をもって事態の改善に動けたことも大きな成果になったという。
有料化でキャンプ体験の質も確保
オーバーツーリズムによる地元住民や環境への負荷を、有料化によって解消しようとする動きは、キャンプブームが到来した20年以降、全国に広がりを見せている。有料化は、利用客のマナー改善のみならず、利用客自身の「体験の質の確保」にもつながっている。
1930(昭和5)年にオープンした長野県中川村の「陣馬形山キャンプ場」は、それまで無料の公設キャンプ場として村が運営してきたが、21年4月から民間の中川観光開発(同村)が指定管理者となり、有料施設として再スタートを切った。
近年は、毎週末になるとキャンプ場にテントがひしめき、キャンパー同士のトラブルも発生していたという。有料化し、テントの上限を最大18張(約50名)に設定することで、キャンプ場の空間に余裕が生まれ、利用者自身の「体験の質の確保」にもつながっているという。
ゴミ放置や騒音被害などといった近隣への負荷を解消し、利用客自身の体験の質向上にもつながるキャンプ場の有料化は、今後もさらに広がっていきそうだ。
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