小売店舗の在庫管理、ロボット導入に踏み切れないワケ:日本では丸井グループが導入(2/3 ページ)
小売業の抱える大きな課題の一つに「在庫管理」があると言われている。ロボットは在庫管理問題を解消する救世主になれるのか? 海外・国内事例を踏まえながら可能性を探っていく。
――なるほど。国内の小売業界でそういったロボットを活用した事例はありますか?
郡司氏: そうですね。買い物客が入ってこないという点で倉庫とロボットの相性は抜群に良いですよね。例えば、丸井グループの物流センターにあるロボット倉庫「オートストア」を視察したことがあるのですが、ロボットの動きの早さに驚きました。人が入ってこないロボットだけの独立した空間を確立できると、人に合わせた安全性に配慮する必要がないので、ロボットのスピードに合わせて仕事ができるわけです。
そう考えると、人間のいる空間でロボットに作業させるのではなく、完全にロボットのために分けられたエリアで作業したほうが、ロボットの能力を100%発揮させることができると思います。
――確かに、倉庫内を人が歩くのは危険ですし、ロボットだけの空間なら安全で、かつロボット自体の生産性も上がりそうですね。
郡司氏: どんなに性能が優れたロボットを作れたとしても、人間の安全性を無視することはできませんからね。混ぜて考えてはだめなんです。ロボット自体の生産性が上がらなければ費用対効果が出ないので導入の可能性は低くなります。そういった意味でもロボットのための独立した空間を確保することは、大きなポイントです。
――そう考えるとウォルマートが在庫管理ロボットの利用を中止したのは、ロボット活用の位置づけが中途半端になってしまったからでしょうか?
郡司氏: そうでしょうね。ロボットが効率よくピックアップできず、ただ監視しているだけだとあまり意味がないですよね。とはいえ 、ウォルマートも在庫管理ロボットを500店舗に展開していたようなので、BOPISの需要が増え店員を増員する以前はロボット活用に一定の効果はあったのだと思います。
――人を増やすのか、ロボットに任せるのかの判断が難しそうですね。
郡司氏: あとは費用対効果ですよね。現状は在庫管理ロボットや巡回監視ロボットなどの導入費用は決して安くないと思うので、投資コストに見合う成果を得られるかが重要です。単純に今の価格だと難しくても、ロボットのコストが安くなってくると導入が進む可能性はあると考えられます。
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