小売店舗の在庫管理、ロボット導入に踏み切れないワケ:日本では丸井グループが導入(3/3 ページ)
小売業の抱える大きな課題の一つに「在庫管理」があると言われている。ロボットは在庫管理問題を解消する救世主になれるのか? 海外・国内事例を踏まえながら可能性を探っていく。
人手不足が深刻化すると、ロボットが現実的な選択肢になる可能性も
――米国のスーパーマーケットチェーン、ストップアンドショップは店内の潜在的な危険を見つけたらスタッフに知らせる巡回ロボット「Marty」を導入していますが、細長い本体の上部に目と口がついていて、愛嬌のある表情でロボットの無機質さを払拭するという特徴があります。日本の小売店舗でも、おしゃべりロボットなどエンタメ要素の強いロボットを活用したアプローチは有効なのでしょうか?
郡司氏: 企業側の視点で言えば、やはり費用対効果を考えないといけないと思います。ロボットが楽しさや癒やしを提供した結果、来店客が増えるのであれば導入される可能性はありますよね。500万円のロボットを導入して売り上げが1000万円アップするなら導入する価値があるわけです。ただ、生活者視点に立った時、普段行かないスーパーに可愛いロボットがいるからという理由でわざわざ足を運ぶかというと、なかなか難しいですね。
――そもそも、ロボット導入は高コストなイメージですが、高額なロボットに先行投資する余裕はあるものなのでしょうか?
郡司氏: 販促予算など、あるところにはあると思います。なので、重要なのは費用対効果をどう説明するかですよね。ロボット活用の事例自体がまだ多くないので、本当にコストに見合う売り上げを出せるのかという保証もないです。そのため、最初にやろうと決断するハードルはどうしても高くなってしまいます。
――なかなか導入が進まなそうですね。
郡司氏: そうですね。そのため無料ないしは安価に試せるPoC(Proof of Concept:概念検証)が多いです。実際にPoCをやってみると、小売企業の反応は悪くないみたいです。しかし、実導入となると話は別。やはり費用対効果の話が当然出てくるので、PoC止まりになっている事例も少なくありません。
――もう一歩先、本当にお金を払ってでも導入しようと企業が判断できるようになるには、どのような変化が必要でしょうか?
郡司氏: まず、働く人がどうしても確保できない状態になったら、その解決策の一つとしてロボット活用が現実的な選択肢に入ってくると考えられます。あるいは特定のロボットがヒットして生産コストが下がり、中身のソフトウェアも進化してさらなる効率化が図れる……という良い循環が生まれて社会への浸透が進むケースもあると思います。そう考えると、汎用性は必ずしも必要ないにしても、常にバージョンアップできるような形のロボットが望ましいでしょうね。もちろん、最初は採算が合わなくて大変だと思いますが、将来性を見据えた戦略として有効だと思います。
――なるほど、労働 人口減少で人手不足が深刻化する日本において、ロボット活用は将来的に有効な戦略になり得るかもしれませんね。本日はありがとうございました。
著者紹介:東芝テックCVC note
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