30年横ばい……日本人の給与アップ阻む「労使間の格差」 収入増へ個人ができる5つの方法とは?:企業と働き手のWin-Winな関係へ(3/4 ページ)
日本人の給与は30年ほぼ横ばい。賃金アップが実現しない背景に、従来の賃上げ交渉の限界や「労使間の格差」を筆者は指摘する。格差を克服するためには、働き手の「エンプロイアビリティ(雇用される能力)」を磨くことが必要になる。「労使対立」から「労使互恵」へと転換する新時代の労使の姿を考える。
働き手が平均的な上昇率以上の賃上げを望む場合、自身が所属している会社が人件費を投資と見なす考え方を持ってくれているならば、ひたむきに目前の仕事に邁進することで実現していくかもしれません。
ところが残念ながら、多くの会社は人件費をコストと見なし出来る限り低く抑えようと考えがちです。その場合、今のまま目前の仕事に邁進しても30年横ばいのトレンドから逃れることは期待できません。働き手が平均的な賃金上昇率を超えて収入を増やしたいのならば、個人でできる方法を模索する必要があります。
しかし、会社と賃上げについて個別交渉するのはハードルが高いとすると、収入アップを実現するための一般的な方法としては大きく5つです。
賃上げの個別交渉へ道を拓く5つの要素
1つは人事考課で高い評価を得て、より上の役職に就くこと。役職が上がれば、社員等級が上がったり、手当てがついたりして収入はアップします。
2つ目は、会社から与えられた目標を上回る成果を出すこと。成果に連動することが多い賞与が増えたり、出来高払いの契約であれば成果を出すほど報酬が上乗せされたりします。
3つ目は、高いスキルを身に着けて希少な人材として会社から認識されるようになること。経理であれば経験を積んで決算処理を任されるようになったり、税理士や公認会計士などの資格を取得したりして人材としての付加価値を高めれば、職能評価の査定でランクが上がったり資格手当がつくなど、平均的な賃金上昇率を超えた収入アップにつながる可能性が高まります。
4つ目は転職すること。転職で賃金が下がってしまうこともありますが、今より賃金水準が高い会社に転職できれば、同じような仕事に就いたとしても収入をアップさせられます。
5つ目は、副収入を得ること。副業や金融投資など、今の仕事に収入をプラスできれば、トータルの収入を増やすことができます。もちろん、労働時間が増えすぎて心身の健康を害してしまっては元も子もありませんが、本業や生活とのバランスさえ上手くとることができれば、平均的な賃金上昇率を超えた収入アップも期待できます。
役職・成果・スキル・転職・副収入―――これら5つの要素が収入アップをもたらすのは当たり前のことですが、得られるものはそれだけではありません。雇う側と雇われる側の立場の差からあきらめざるをえなかった、働き手個人よる賃金交渉の余地も生まれます。
役職・成果・スキルは、それぞれ働き手にとって人材としての価値を高める要素です。また転職を視野に入れると、会社の中に限定される内部労働市場ではなく、社外に広がる外部労働市場も含めて賃金の適切性を判断でき、外部から見た自分の評価を客観的に把握しやすくなります。外部の賃金相場や客観的評価は、自身の職業キャリアをさらにレベルアップさせる上で有益な参考指標となるものです。さらに、副収入の獲得を通じて得た新たなスキルや知見、人脈などを本業に役立てられる可能性もあります。
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