なぜクルマの電装用バッテリーはリチウムにならないのか:高根英幸 「クルマのミライ」(1/4 ページ)
レース用の小型軽量な高性能バッテリーを除けば、クルマの電装用バッテリーは依然として鉛酸バッテリーが圧倒的な主流となっている。なぜか?
どんな動力源でも、クルマは電気がなければ動かない。
EVやハイブリッド車はもちろんのことだが、内燃機関エンジンだけで走行している純ガソリン車であっても、その制御は半導体を駆使した電子制御であり、「電気がクルマを動かしている」といっても、決して言い過ぎではない。
そのためバッテリーがキチンと機能してくれなければ、クルマは走ることができない。エンジンを始動させるにはセルスターターが大電流の供給を受けて、エンジンを強く回転させる必要がある。この時のためにバッテリーは存在し、走行中は次の始動に備えてオルタネータからの充電を受けて電力を回復させる一方で、電装品へと供給する電力の電圧を安定化させるバッファーとして役立っている。
実は鉛酸バッテリーはクルマより歴史があり、クルマの黎明期にはガソリン車よりもEVの方が重宝されたという事実もある。ただし航続距離が短くては富裕層のおもちゃにもならないので、バッテリーだけでなくエンジンと燃料も搭載し、発電させながら走行するシリーズハイブリッド(当時はミクステと呼ばれた)が多くを占めていたともいわれている。
初期のEVには、鉛酸バッテリーが使われており、大きく重く蓄電量(=エネルギー密度)が低いため、充電時間や航続距離などの問題を抱えていた。そのため、変速機やエンジンの効率化でグングンと動力性能や実用性を高めたガソリン車に取って代わられたのだ。
しかしバッテリーの主流は今やリチウムイオンバッテリーだ。実際にはリチウムイオンでもその組成には大きく分けて3種類あり、高性能な三元系から比較的安価で安全性の高いリン酸鉄系まで、目的と容量、コストなどによって使い分けられている。
リチウムイオンバッテリーはエネルギー密度が高く、セル単位の起電力も高い、極めて高性能な充電池だ。しかし車載用としては高い安全性や信頼性も要求されるので、EVやHEVの駆動用としてはコストをかけられても、電装用にはなかなか採用されにくい
EVの駆動用バッテリーはもちろん、バッテリーを内蔵した電子機器は今やほとんどがリチウムイオンバッテリーを採用している。ポータブルバッテリーなど電源供給を主としたアイテムでは、リチウムイオン一択という状況が形成されている。
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