「課長にすらなれない」──絶望する40代社員が増えるワケ:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
真面目に勤めてきたが、上の世代とは違い「課長にすらなれない」──そんな状況に絶望する40代社員が増えています。減り続ける管理職ポストの実態と、深刻な賃金格差とは。「肩書きなき40歳問題」について河合薫氏が解説します。
年寄りは嫌われ者? あるがままの現実
いずれにしても、たとえ課長に運良く昇進できたとしても、トップに近いところまで進める人はごくごく一部です。どうせどこかで消えていくなら、余力があるうちに次なるものに進んだ方がよほどいいと考えることもできます。
という話をすると、「じゃ、転職!」となりがちですが、「転職さえすれば万事OK!」という問題でもない。
転職で賃金が下がる可能性もあるし、人間関係がうまくいかない場合だってある。50歳を過ぎれば「用済み」扱いされる可能性は会社を変わっても付きまとい続けます。
会社の組織構造がピラミッド型である限り、どんなに会社を変えたところで“椅子“の奪い合いは続くし、どんなに平均寿命が伸びようとも、ビジネスの世界では年寄りは嫌われる。これが「あるがまま」の現実なのです。
しかも“できる人“が課長や部長に昇進するとも限りません。私はこれまで何度もそういう現場を見てきました。
どんなに客観的に評価できるシステムを作っても、人が人を評価する以上、私情が入ります。“上が使いやすい人”の方が評価されるし、自分を追い越さない人を引き上げる“上“も少なくありません。人事は常に理不尽で、非合理的で、たまたまの結果なのです。
“心の上司”になれるのか
その一方で、昇進したエリートが「部下の“心の上司”になるか」というとそんなこともありません。
私はこれまでインタビューしてきた900人以上の、特に40代以上の人たちは「何か問題や困難に遭遇した時、思い浮かべる上司がいる」と、“心の上司“の存在を話してくれる人がたくさんいました。
ある人は「大きな決断をしなければならない時に、若い頃、世話になった〇〇さんならどうするかなぁ、と脳裏に浮かぶんです」と話し、ある人は「社内で左遷された時に『腐るな! 踏ん張れ!』と励ましてくれた〇〇さんのおかげで、今の私がいます」と涙を浮かべます。さらに「仕事はそんなにできる人じゃないですけど、人間的に素晴らしい人で。あの人みたいになりたいって思うと『しんどい仕事もやってやろう!』って気持ちになりました」と満面の笑みを浮かべる人もいました。
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