社長が連れてきた「すごい人」は役立たず!? DXを失敗に導く7つの要素:成功するには?(2/5 ページ)
「DXに出遅れたものは敗者となる」と焦る企業は多い。一方で、DXに成功している企業は少ないと筆者は主張する。その原因は?
DXを失敗に導く7つの要素
こうしたDXの位置付けを踏まえた上で、DXを失敗に導いてしまう7つの項目を次のように整理しました。
(1):組織やCTO、CIOの問題
この問題が最も大きいといっても過言ではありません。
まず、どの部門がDXを主導・主幹するのかという組織上の問題があります。多くの企業においては、IT部門(情報システム部など)が担っていますが、これはあまりお勧めできません。全体構想が完全に決まっていて、システムを導入(Implementation)するステージであればIT部門主幹でよいかもしれません。しかし、全体の構想を描く段階からITシステム部門が主導すると良好なものになりません。それは戦略視点、経営課題視点が欠如するからです。
経営戦略不在のDXは避けるべきです。DXを主導する組織は、必ず経営戦略や経営企画部門がリードし、その組織にIT部門、営業部門、法務部門などをアサインすることが望ましいです。また、各部門からの選出者は、「DXプロジェクトに参加してあげている」というお客さま感覚になってはいけません。その部門のDXの成否に対する責任を負うという“自分ごと化”が肝要です。
次にCTO・CIOの問題です。社長や取締役が外部から連れてきたCTOが入社後に全く機能しないというのは、よくあるケースです。役員からの推薦で入ってきたので周囲は否定もできません。DXの最高責任者が最大のボトルネックになってしまうのです。
機能しない大きな理由は何でしょうか? それは、CTOがその業界のことに無知であり、しかも理解しようという意識が希薄なことです。
「店舗や営業現場のことは他の社員がよく知っているでしょう。私(CTO)はテクノロジーに詳しいので、今までの経験で成功してきたフレームに皆が合わせてくれればうまくいくことでしょう」――。
CTOがこういった意識だと、現場や古参社員とハレーションを生んでしまいます。現場とテクノロジーが組織上の問題によって連携できなくなるのです。しかも、他の業種における成功体験がそのまま別の業種にも当てはまるかというと、そんなに甘いものではありません。
現場社員はITを勉強し、外部から入社したメンバーは既存ビジネスに敬意を払い自らもその特性を熟知しようとする姿勢・制度が必要になります。
ただ店舗視察に行くというレベルではなく、実際に1日店舗で働いて、現場のオペレーションや使用しているシステム、現場の声などを直接体感することをお勧めします。これは、研修制度や評価制度に組み込んででも徹底すべき重要事項です。CTOだけではなく、役員、部長クラスも対象となる事項と認識しましょう。
DXに長けた人材(IT企業出身者やコンサル会社出身者)を自社で大量採用して、自社内製化を目指してDXのほぼ全てを主導しようという企業もありますが、絵に描いた餅になる可能性があります。
コンサル会社やIT企業の優秀な人材が事業会社に行くことは稀有(けう)です。コンサル会社と同じくらいの給与水準で、企業ブランドも高ければ別です。しかし、多くの企業はそうではありません。採用する人材の給与水準を無理やり上げたとしても、結局は求めるレベルの人材が質・量ともにそろわず頓挫します。そして、採用してしまった人材の行き場をどうするかという課題が残ります。また、その人材の給与水準が高すぎるために、既存社員が不信感を抱きます。
給与水準や企業の知名度に魅力を感じるような人だけを採用し、組織を構成するのは避けましょう。既存社員とともに汗をかき、社風も愛してくれるような人がいたら、キーパーソンとして雇用するというくらいのスタンスが適切です。
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