社外への人材流出を防ぐ「社内求人」 導入3カ月で見えてきた効果とは:採用コスト削減に(1/4 ページ)
コロナ禍を受け、採用難の状況が続いている。そんな状況下で重要なのは「社員にいかに長く自社で働いてもらうか」だと言える。「社内求人」という手法を社内で3カ月試してみた結果を紹介する。
コロナ禍になってすでに2年半ほどが経過した。コロナ禍になったばかりのころ、どの業界も採用活動を止めて様子を見ていたが、現在は採用活動が二極化している。業績が悪い業界は引き続き採用には消極的だが、業績がいい業界はこぞって採用を再開、加速させている。
今では遠い昔のように感じるが、コロナ禍以前は少子高齢化を背景とした強力な売り手市場だった。その売り手市場の様相がコロナ禍の影響がある程度見えてきた状況で再燃している。以前との違いは、全業種が積極的に人を採り合っていた状況から、業績のいい限られた業界の人材獲得競争となっている点だ。
そのため、単純に採用市場から採用するパターンだけでなく、業績が悪い業界からの転職者を採用するパターンが増えている。業績のいい業界からすると別業界からの転職希望人材を採ることができる分、採用活動の負担は多少軽減されていると言える。ただ、少子高齢化による採用母集団の減少、業績が悪いことから採用を控えていた業界が採用活動を再開することを考えると、今まで通りとはいかないだろう。
そういった採用難の状況において、重要なのは「社員にいかに長く自社で働いてもらうか」だ。すでに戦力となっている自社社員をできる限り引き留め、長く働いてもらうことは採用と同じくらい重要である。
ただ、これだけ転職が一般的になった現代において、社員に長く働いてもらうことも採用同様に難しくなっている。ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリーが発表した「コロナ禍の転職と副業に関する調査」によると、転職時の重要項目1位は「仕事内容のやりがい」(60%)だった。2位は「自己成長性」(46%)、3位は「給与水準」(45%)と続いた。現在の業務内容に対する不満や将来性から転職を検討する人が多いことが分かる。
つまり、仕事内容のやりがいを満たす人事制度「社内求人」を導入することで離職率を下げることができると考えられる。10年以上現場で採用支援に従事し、実情や課題を熟知している筆者が、サイバーエージェントや三菱ケミカルホールディングスでも導入される社内求人の効果的な活用方法を紹介する。
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