月利8%? 激増する怪しい投資話、金融教育は対策となるか:金融ディスラプション(3/3 ページ)
「いま月利8%で回っている。追加で500万円入れようと思っているが、どう思う?」。こうした相談をしてくるのは、日本を代表する大企業の一流とされている社員だ。優秀で頭もよい30代、40代の働き盛りが、投資詐欺のターゲットになっている。
すべての世代に金融教育が重要
個々人の対策も必要なことだが、業界としてはこの状況にどう対処すればいいのだろうか。投資への関心が高まるのは良いことだが、詐欺の増加は投資意欲を萎ませることにもつながる。
「規制を作ってもいたちごっこな気がしている。悪いやつは抜け道を見つけていってしまう。ユーザーの金融教育は重要度が上がっていくだろう」(堀江氏)
金融庁は国家戦略として、すべての世代を対象に金融教育を推進していくことが必要だと提言する方針だ。投資家個人個人が金融リテラシーを身に着けて、判断できるようになるしか、詐欺への対策法はない。
4月からは、高校の家庭科で金融教育の授業も始まった。とはいえ、家庭科教師自身の金融リテラシーが高いというわけでもなく、生徒と一緒に学びながらというのが実情だという。金融広報中央委員会が公表している「金融リテラシー調査 2019年」によると、日本人の金融リテラシーは、世界各国と比較しても低い。
こうした背景の元で、証券会社もIFA事業者も運用会社も金融教育に力を入れている。しかし、金融業者による教育は、投資商品を売るがためのものだと思われがちという難しさもある。証券会社が行う投資教育であれば、経済や銘柄の分析方法などが中心になる傾向があり、それは暗に最終的に自社で株式を売買してほしいという思いが入ってしまう。だから「販売と教育はかなり意識的に分けないと、ユーザーが話を聞いてくれない」と堀江氏は言う。
一方で、販売を全く意図しない金融教育も難しい。それはあくまでCSRの範囲内の活動となり、掛けられるコストや継続性に課題があるからだ。
仮想通貨やファンド化商品など次々と新しいものが生まれる投資商品。そして、今や投資は一部の人のものではなく、誰もが気にするものとなってきた。急速な状況の変化に対し、投資教育はやっと始まったばかり。「資産所得倍増計画」の実現には、業界の制度だけでなく、ユーザーの地道な金融リテラシーの向上も不可欠だということを、忘れてはならないだろう。
関連記事
- 厚切りジェイソン、ツイート全消し 米国株下落で非難殺到か?
タレントの厚切りジェイソンさんが、運営するツイッターの投稿をすべて消したことが話題になっている。22万人あまりのフォロワーを持つ人気アカウントであり、影響力は大きかった。削除の理由は明かされていないが、同氏が推奨してきた米国株投資に逆風が吹いているためではないかと見られる。 - 今なぜ若者がインデックス投資? 流行の陰につみたてNISAとYouTuber
一昔前までは、株式投資といえば上がりそうな銘柄を探してそれを買うというイメージが強かった。しかし今、若者の間でインデックス投資が流行している。ではなぜ、インデックス投資が盛り上がっているのだろうか。 - “レバナス投資”で被害続出? 背後に投資系インフルエンサーの影も
米国株ブームで増加した投資系インフルエンサーの推奨により、「レバナス」と呼ばれる投資信託がここ半年で半値近くまで大暴落している。 - 高まる資産運用意識 お金があっても踏み出せない理由
2019年夏の「老後2000万円問題」を契機に、資産運用意識が高まっているようだ。メットライフ生命が実施した調査によると、資産運用意向のある人は51.0%と18年の調査よりも3.5ポイント増加した。しかし、実行している人は26.2%と前年から0.5ポイントの伸びに留まっている。 - 投資をしている人が4割突破 反面、老後2000万円問題の功罪も
日本のビジネスパーソンの投資家比率が急上昇している。フィデリティが毎年行っている「ビジネスパーソン1万人アンケート」によると、2020年の投資をしている人の比率は40.5%となり、ついに4割を超えた。15年の比率は30.4%であり、5年で10ポイントも上昇したことになる。この背景には何があるのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.