コロナ禍で列車本数を「減らす鉄道」「減らさない鉄道」の違い:今後どうなる?(2/4 ページ)
長引くコロナ禍で、鉄道各社の戦略に違いが見られてきた。春に続き8月にダイヤ改正に踏み切る東京メトロ。そして、JR東日本やJR東海は……。
東京メトロ、8月27日に銀座線などをダイヤ改正
7月7日、東京メトロは8月27日にダイヤ改正を行うと発表した。対象路線は銀座線、丸ノ内線、東西線、千代田線で、「お客様のご利用状況に合わせた運転本数の見直し」とのことである。
主だったものを挙げてみよう。銀座線は平日10〜16時、土休日8〜20時の渋谷方面行きおよび浅草方面行きを1時間当たり18本から12本にする。またラッシュ時の本数を削減する。
丸ノ内線は平日日中および土休日の本数を微減、ラッシュ時の本数削減、中野坂上駅〜方南町駅間で3両編成の運転を取りやめ、全区間の列車を6両編成に統一する。
東西線、千代田線はラッシュ時を中心に本数を微減する。
同社では、この春にダイヤ改正を行ったばかりである。そして再び、8月にダイヤ改正に踏み切った。コロナ禍で乗客数が戻っておらず、利用状況を見て本数を減らすようだ。
他社乗り入れのある東西線や千代田線が微減(乗り入れ先はダイヤ改正をしない)なのに対し、車両と設備の構造上他社線と乗り入れできない銀座線と丸ノ内線は、大規模にダイヤ改正を行う。時期を見ると、緊急のダイヤ改正という側面も感じられる。
東京メトロは、23年3月期第1四半期の決算で鉄道事業の営業利益が88億2400万円となっている。前年同期は営業損失が36億3000万円だった。利益自体は乗客が戻ったことで回復したものの、まだコロナ前ほど回復できていない状況にあるといえよう。
銀座線の平日日中などは大きく本数を減らしたが、路線の特性上いざ利用者が増えてきたら元通りに戻せるということもある。ただ、この先の見通しは厳しいという予想を立て、商品である鉄道のダイヤをどうするのか戦略を立てているのだろう。
他の鉄道会社でも、ダイヤ改正こそしないものの、似たような視点でこの先の厳しさを想定しているところがある。
関連記事
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。 - ドラえもんがつくった地下鉄は公共交通か? ローカル線問題を考える
『ドラえもん』に「地下鉄を作っちゃえ」という話がある。のび太がパパのためにつくった地下鉄は公共交通と認められるか。この話をもとに、公共交通になるための過程、利用者減少から撤退への道のりを考えてみたい。 - 2025年の大阪・関西万博で、鉄道の路線図はどうなるのか
2025年に大阪、夢洲で「2025年大阪・関西万博」が開催される。政府は主要公共交通機関に大阪メトロ中央線を位置付けた。このほか会場へのアクセスには船とバス、さらに具体化していない鉄道ルートが3つ、近畿日本鉄道の構想もある。また会場内の交通には、3種類のモビリティが計画されている。 - 不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか
鉄道ファンにとって最高の「借景」が楽しめるトレインビュールーム。名が付く前は、線路からの騒音などで不人気とされ、積極的に案内されない部屋だった。しかし鉄道ファンには滞在型リゾートとなり得る。トレインシミュレーターや鉄道ジオラマなど、ファンにうれしい設備をセットにした宿泊プランも出てきた。 - 東京メトロ「有楽町線」「南北線」の延伸で、どうなる?
東京メトロ有楽町線と南北線の延伸が決定した。コロナ禍で事業環境が大きく変化する中、東京メトロが計画する今後の戦略とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.