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トヨタ「シエンタ」とホンダ「フリード」、争いの歴史 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)

8月23日、トヨタの「シエンタ」がフルモデルチェンジを行い、第3世代となる新型モデルの発売がスタートしました。シエンタは、1.5リッター・クラスのエンジンを搭載するスライドドアを持つ3列シートのミニバンです。いわゆる「コンパクト・ミニバン」と呼ばれ、3列シートのミニバンとしては最小クラスとなります。今回は、そのシエンタの歩んできた歴史とコンパクト・ミニバン市場の成長を振り返ります。

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フリードとシエンタの争い

 しかし、ホンダはモビリオをひっこめた代わりに、強力な新型を投入します。それが08年デビューの初代「フリード」です。“ちょうどいい”をキャッチコピーとした初代「フリード」は、09年には約8万台を販売して、年間ランキング7位にランクイン。翌10年は販売を年間約9万5000台に伸ばし、ランキングは5位にアップしました。12年には約10万6000台で4位になるなど、見事、ヒットモデルとなったのです。


見事ヒットモデルとなった初代フリード

 一方、その間のシエンタはといえば、03年デビューの初代モデルが継続販売されており、販売は年間2〜3万台レベルで足踏み状態となります。

 しかし、フリードのヒットのおかげで、コンパクト・ミニバン市場は、それ以前よりも拡大して、08〜14年は年間8〜15万台といった規模に成長しました。

 そして、15年にトヨタの逆襲が始まります。2代目シエンタの登場です。まるでトレッキングシューズを思わせるような斬新なデザインで登場した2代目シエンタは、16年には約12万6000台を売り、年間ランキングで3位に食い込んだのです。コンパクト・ミニバンとしては12年のフリードの売り上げを抜いて、過去最高の成績となりました。


2代目シエンタ。過激なデザインも話題になった

 とはいえホンダ側も黙っていたわけではありません。2代目シエンタ登場の翌年となる16年に2代目フリードを投入。17年には、年間約10万4000台を売ってランキング5位に。シエンタは、年間販売約9万7000台の7位でした。フリードが巻き返したわけです。


2代目フリード。シエンタを巻き返した

 負けじとシエンタも18年のマイナーチェンジで2列シート車を追加して販売を伸ばし、18年と19年は成績を逆転。この2台の戦いにより、コンパクト・ミニバン市場は、年間約20万台規模に達したのです。

 とはいえ、コロナ禍に襲われた20年と21年の2台の成績は下降線となり、コンパクト・ミニバン市場は年間15万台程度にまでしぼんでしまいました。

 今年になって新型が登場したことで、シエンタの販売が戻ることが予想されます。年間を通して販売できる23年には、年間10万台を超える数字が期待したいところ。また、フリードのフルモデルチェンジが初代から2代目と同じ8年であれば、24年には次世代の3代目フリードが登場することになります。そういう意味では、23〜25年は再び、コンパクト・ミニバン市場が盛況になるとの予想も。

 シエンタとフリードが戦うコンパクト・ミニバン市場は、これからが本番となるのではないでしょうか。

筆者プロフィール:鈴木ケンイチ

1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。


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