総務は至急「社内ぶらぶら」すべし! ウクライナ侵攻の自社への“意外な影響”を回避するには:「総務」から会社を変える(2/2 ページ)
コロナ禍、ウクライナ侵攻、それによる資源高やインフレ危機──こんな状況下で総務に必要なのは、“攻め”よりもむしろ“守り”の姿勢かもしれません。VUCAの時代にこそ、総務は“ぶらぶら”すべきと筆者は説きます。その理由とは?
PDCAと何が違う? 必要なのは「OODAループ」
近頃、OODAループという言葉を目にする場面が増えてきたのには、リスク管理の重要性が増したVUCA時代によるところも大きいのでしょう。このOODAループとは、アメリカの軍事戦略家であるジョン・ボイド氏が発明した、先の読めない状況で成果を出すための意思決定方法です。そのステップとは、「観察(Observe)」「仮説構築(Orient)」「意思決定(Decide)」「実行(Act)」の4つとなります。
本稿テーマである「戦略的な守りの総務」とは、まさにこのOODAループのことでもあります。守りの総務の対象となるリスクは、決して計画的に生じてはくれません。従来のPDCAでは対処しきれず、素早く状況を判断して、ケースバイケースで対応していくことなります。
OODAループの1つ目のステップである「観察」は、した課題管理でもあります。自社に影響を与える事象を注視、観察していき、2つ目のステップ「仮説構築」で自社にどのような影響があるかを想定して仮説を立て、「これはリスクとなる」「チャンスになり得ると判断することが、3つ目のステップの「意思決定」となります。そして、それぞれに適応した対処の仕方を「実行」していきます。
PDCAのような計画的な対処ではなく、状況を素早く理解し、自社の影響度合いを想定して対処につなげていく、この迅速さが重要となってきます。
となると、重要なことが見えてきます。あるリスクが自社に実際に起こった際の影響を考えるとなると、自社に対する深い理解が必要です。自社について知らないことには、どのような影響が生じるか想定しようがないからです。外部とのネットワーキングが必要と先述しましたが、内部にも精通する必要があるのです。
社内情報に精通するには
社内情報に精通するにあたって重要なのは、社内のインフルエンサーとの関係作りです。組織内で影響力を持つ人は、個々の部門内に存在しているものです。優秀な営業パーソンであったり、凄腕の技術者であったり、誰もが一目を置く人物です。そのような従業員との関係の中で、さまざまな組織内の情報を収集していくのです。
- 今、その組織内にどのような問題があるのか
- 組織の動きに影響を与えるのは何か
- 組織のウィークポイントは何か
上記のような、あまり表に出てこないが、その組織に影響を及ぼすポイントを把握します。そうした情報を収集し、外部の情報との接点の中で影響を見極めていくのです。
となると、必要なコトは、昔から言われている「ぶらぶら総務」、MBWAとなります。MBWAとは、"Management by walking around(マネジメント・バイ・ウォーキング・アラウンド)"の略、訳すと「マネジャーは現場に足を運び、ブラブラしながら仕事をしましょう」というわけで、マネジメント層が現場に足を運ぶ重要性を説いた言葉です。古くは、南北戦争時にリンカーン大統領が前線の現場に足を運び、最前線の状況を自らの目で把握していた、という史実から生まれた言葉だと言われています。
テレワークの浸透で現場にいる人は減っているかもしれませんが、インフルエンサーとの関係性を構築する努力は必要となります。
社内外の人脈形成のために外に出る、外に目を向ける、そして、社内をぶらぶらする。戦略的守りの総務には、社内外ともに歩き回ること何より重要と言えるでしょう。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 代表取締役社長、戦略総務研究所 所長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、戦略総務研究所 所長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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