優秀な人を欲しがる現場、見つけられずに悩む人事──「中途採用の壁」を壊すため、何をしたのか:狙うは引く手あまたのDX人材(1/4 ページ)
DX人材の採用に注力し始めても、部門の要求が高く、マッチする人材がそもそも見つからなかった東洋エンジニアリング。開始から「半年間、成果なし」だった市場価値の高い人材の採用を、どのようにして軌道に乗せたのか。取り組みを聞いた。
現代の企業に求められる役割は、ただ商品やサービスを提供することだけではない。脱炭素化やSDGsなど、社会的責任も大きい。もちろん、利益を出さなければ企業として存続できない。コストを削減しつつ生産性を上げるためのカギを握るのが業務のDX化だ。しかしながら、各社がこぞってDX人材を求めるため、採用しづらい状況がある。
そのような中、ダイレクトリクルーティングに取り組むことでキャリア採用(中途採用)に成功している企業がある。東洋エンジニアリングだ。同社がDX人材の採用に注力し始めた頃は、部門の要求が高く、マッチする人材がそもそも見つからないという課題が立ちはだかっていた。
一種の「採用あるある」といえる課題だが、同社ではある取り組みによって対応したという。開始から「半年間、成果なし」だった市場価値の高い人材の採用を、軌道に乗せられた訳とは。経営管理本部 人事部の佐藤薫氏と、同人事部 リクルーティングチーム キャリア採用セクションリーダーの矢島千明氏に話を聞いた。
「半年間、成果なし」だった状況を変えた取り組みとは
1961年創業の東洋エンジニアリングは、長年“エンジニアリング”を核とした事業――肥料(アンモニア・尿素)、石油化学、石油・ガス、発電などさまざまなプラントの研究や開発協力、設計、建設、技術指導などを展開している。
そのため、キャリア採用する場合でもプラントエンジニアリング経験者をメインに、エージェントを通じて採用してきた。退職者が出た部署の人員補充が主だったが、採用の必要性に変化が出てきた。
「2009年に、持続可能な社会への貢献を重視したMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、20年にはマテリアリティを制定。25年までの中期経営計画のグリーン戦略とブルー戦略で、よりアクセルを踏んでいく必要が出てきた」と佐藤氏。
「グリーン戦略は、これまで培ってきた知見・経験・技術を活用してカーボンニュートラル分野を中心に新技術・事業開拓を進めていくこと、ブルー戦略ではEPC(設計・調達・建設試運転。プラント事業などを一気通貫で引き受けること)において、海外拠点を中心としたグループオペレーションを進め、業務改革とDX活用を通して生産性を向上させ、より競争力のある商品を提供する。どちらにとってもDXが重要な部分を担っており、それは今まで社内にいないタイプの人材を採用しなければならないことを意味しています」
そこで目をつけたのが「たまたま世の中で盛り上がってきていた」(佐藤氏)ダイレクトリクルーティングという手法だ。エンジニアリングの経験がなくても、転職希望者の職務経歴書をチェックして、人材を必要としている部門から求められている要件とマッチしていれば、自分から声をかけることができる。
「ダイレクトリクルーティングを試したいと提案したところ、面白そうなので挑戦する価値があるよね、ということで取り組めるようになりました」(佐藤氏)
この方法がピッタリとハマり、20年度のキャリア採用40数人のうち、半数以上がダイレクトリクルーティングによる採用となったのだ。
しかし、この成功の裏には、さまざまな解決すべき課題があったという。
関連記事
- 幹部候補か、“万年ヒラ”か キャリアの分かれ目「30代以降の配置」を、人事はどう決めている?
「育成」の観点から異動配置させる20代が過ぎると、多くの企業は「幹部候補の優秀人材」と「それ以外」の社員を選別します。人事は、そうした異動配置をどのように決めているのでしょうか。年代層別の異動配置のロジックをみていきます。 - 「優秀でも残念でもない、普通社員」の異動に、人事が関心を持たない──何が起きるのか
社員の異動を考える際、人事部が真っ先に関心を持つのは「優秀社員」と「残念社員」。その間にいる大多数の「普通社員」は後回しにされがちという実態がある。しかし、この層への取り組みを疎かにすると、ある懸念が生まれる。 - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。 - 「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。 - 「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのか
「来年度の目標は、残業時間ゼロ」──社長の突然の宣言は、まさに寝耳に水の出来事だった。準備期間は1カ月。取り組み方は、各部門に任せられた。現場はどう対応したのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.