「求人に応募がない」なら、人事自ら採りにいく 採用競争時代のダイレクトリクルーティング入門:採用競争に勝つ! ダイレクトリクルーティング(1/2 ページ)
近年注目度が上がっている攻めの採用手法「ダイレクトリクルーティング」。メリット・デメリットのほか、どんな企業において効果的なのか解説します。
採用競争に勝つ! ダイレクトリクルーティング
引く手あまたのハイスキル人材を採るためには、従来の人材紹介などだけでは対応しきれなくなっている現代。攻めの採用手法「ダイレクトリクルーティング」について、パーソルキャリア「doda」編集長の大浦征也氏が解説する。
コロナ禍の落ち込みを抜け、採用市場は復活 企業は“採れない時代”に
第1回緊急事態宣言でほぼ停止した求人は、同年秋口ごろから緩やかに回復に向かい、現在では新型コロナ前以上の水準になっています。当社パーソルキャリアの転職サービス「doda」の調査※1でも、2022年5月の求人数は19年1月以降、過去最高値を記録。19年5月比で165.4%をマークしました。(グラフ1参照)
業種、職種別で見ても、全業種、職種で求人数は前年同月を上回っている状況です。一方、求人数が転職希望者数以上に伸びているため、サービス内の転職求人倍率は1.85倍に※1。つまり、キャリア採用の市場は今、労働者にとって優位な状況にあります。
(※1)転職求人倍率/パーソルキャリア
こうした状況下において、「求人を出しても応募が来ない」「応募はあっても、求める経験やスキルを有する人材に出会えない」といった悩みを抱えている採用担当者は多いと考えられます。
また、新型コロナをきっかけにビジネスがオンラインに移行し、DXなどの業態変革が起こる中「従来採用していなかった属性の人を採用したいが、なかなか応募が集まらない」といった悩みを持つ担当者もいることでしょう。こうした課題に対するアプローチの1つになりうるのが「ダイレクトリクルーティング」という採用手法です。
手間がかかる? ノウハウの蓄積になる? ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリット
ダイレクトリクルーティングとは、人材会社が提供する転職希望者の人材データベースに企業の採用担当者自らがアクセスし、自社のニーズに適した人を探し出し、直接スカウトメール(転職オファー)を送る、攻めの採用手法です。採用基準を明確にした上でそれにマッチする人材にアプローチするため、最適な人材を採用できる可能性が高いとされています。
近年、ダイレクトリクルーティングサービスを提供する各社の利用数が伸長しており、市場規模が拡大しています。一例として、当社が提供する「doda Recruiters(デューダ リクルーターズ)」の利用企業数は19年1月から22年5月で約5倍に増加しています。
ダイレクトリクルーティングには、下記のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
直接アプローチするため、転職希望者の入社意向を高めやすい
事業戦略や業務内容、社風、キャリアなどの魅力を、転職希望者ごとに変えて伝えられます。その人のどんな経験が募集しているポジションにマッチするのかなど、直接説明できるため、転職希望者の入社意欲の向上につながる面があるでしょう。
1人あたりの採用費用が抑えられる
人材紹介サービスなどとは異なり採用担当者自らが活動するので、長期的に見れば採用コストを削減できる可能性があります。
急な人材募集でもすぐスタートできる
採用代行を依頼する場合、採用要件の確認、稟議決裁、求人票や原稿チェック(現場取材設定)など、募集開始まで時間を要します。しかし、ダイレクトリクルーティングは自社内の準備が整い次第、募集を開始できるので、急な採用でもスピーディーに進められます。
自社の採用力を高めることができる
企業自らが採用活動をするため、「自社の課題は何か」「どうすれば改善できるのか」といった分析がしやすくなります。採用ノウハウの蓄積や、採用力強化につながります。
デメリット
人材検索や、求人票・スカウトメール作成などの工数がかかる
採用担当者自ら人材を探すことに加え、求人票やスカウトメールの文面の作成を行う必要があるため、作業工数が発生します。そのため、採用活動が長期戦になる可能性があることを、念頭に置いておきましょう。
こうしたメリット・デメリットを持つダイレクトリクルーティングは、どのようなケースにおいて導入が効果的なのでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
優秀な人を欲しがる現場、見つけられずに悩む人事──「中途採用の壁」を壊すため、何をしたのか
DX人材の採用に注力し始めても、部門の要求が高く、マッチする人材がそもそも見つからなかった東洋エンジニアリング。開始から「半年間、成果なし」だった市場価値の高い人材の採用を、どのようにして軌道に乗せたのか。取り組みを聞いた。
幹部候補か、“万年ヒラ”か キャリアの分かれ目「30代以降の配置」を、人事はどう決めている?
「育成」の観点から異動配置させる20代が過ぎると、多くの企業は「幹部候補の優秀人材」と「それ以外」の社員を選別します。人事は、そうした異動配置をどのように決めているのでしょうか。年代層別の異動配置のロジックをみていきます。
「優秀でも残念でもない、普通社員」の異動に、人事が関心を持たない──何が起きるのか
社員の異動を考える際、人事部が真っ先に関心を持つのは「優秀社員」と「残念社員」。その間にいる大多数の「普通社員」は後回しにされがちという実態がある。しかし、この層への取り組みを疎かにすると、ある懸念が生まれる。
「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。
「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。


