「求人に応募がない」なら、人事自ら採りにいく 採用競争時代のダイレクトリクルーティング入門:採用競争に勝つ! ダイレクトリクルーティング(2/2 ページ)
近年注目度が上がっている攻めの採用手法「ダイレクトリクルーティング」。メリット・デメリットのほか、どんな企業において効果的なのか解説します。
ダイレクトリクルーティングが効果的なケース
特定の経験やスキルを持つ人材の採用
ダイレクトリクルーティングは特に、特定の経験やスキルなどを有する人材に絞った採用に向いています。特定の経験やスキル、志向性などを持った人に対してスカウトメールを送ることで個別性の高いアプローチができるため、求める人からの応募を直接促すことができます。
さらに、入社後のキャリアや活躍できる環境があること、一緒に働く仲間の情報なども個別に伝えられるため、スカウトメールを送る段階から、入社意向を醸成しやすく、迎え入れたいと考えている人材のイメージが明確になっている場合の採用に向いているといえます。
転職求人倍率が高い職種の採用
また、採用競争が過熱している転職求人倍率が高い職種における採用にも向いています。
例えば、多くの企業が欲しているIT人材には、数多くの企業や人材会社からダイレクトメールやスカウトメールが毎日のように届きます。そういった状況下で、個別性の高いスカウトメールを送信することは、転職希望者に一目置かれる効果的なアプローチにつながります。実際、「採用担当者から直接スカウトメールをもらったことで、自分が活躍できる会社であることを知った」といった声も少なくありません。
ダイレクトリクルーティング 3つのステップ
ダイレクトリクルーティングは下記の流れで行います。
ステップ(1):求人票を作成する
ダイレクトリクルーティングを行うにあたっては、採用担当者自らが求人票を作成する必要があります。手間が掛かり、業務負荷となる面は否めませんが、一方で求人の作成は、自社の魅力や良い点、さらには課題について改めて考え、そして求めている人材の採用基準を見直すきっかけにもなり得ます。
とはいえ、人事目線で伝えたいことを盛り込んだ求人票にならないよう注意が必要です。あくまでも転職希望者が知りたい情報を記載することを念頭に制作しましょう。
ステップ(2):人材データベースから採用基準にマッチする転職希望者を探す
ステップ(1)で明確にした採用基準に沿って、経験職種やスキルで人材データベースを検索することはもちろん、希望職種や希望勤務地などでも検索してみましょう。また、登録している転職希望者のマイページのログイン情報から、積極的に転職活動をしているか否かも確認しましょう。毎日こまめに、短時間でもよいのでデータベースを使ってみる。こうした積み重ねがとても大切です。
ステップ(3):スカウトメールを作成する
人材データベースから採用基準にマッチする人材を見つけたら、自社や募集職種の魅力、活躍できそうだと思ってもらえる動機付けにつながる内容を記載したスカウトメールを作ります。大切なのは、「あなただからスカウトメールを送りました」ということが伝わる個別性の高いメッセージにすること。
そのため、候補者本人のこれまでの経歴や携わってきた業務内容などを確認し、「あなたが培ってきた●●の経験を、今回募集している▲▲の職種で活用できます」と具体的にアプローチをすると効果的です。
また、仕事内容に納得した後に転職希望者が重要視するポイントは「どんな人と働くのか」だといわれています。その観点から、採用担当者をはじめ、一緒に働く社員の情報などもスカウトメールを使って開示することで、応募を促せます。実際に当社サービスの事例では、採用担当者の写真やプロフィールの開示有無によって、応募率に約2倍の差が出たというデータがあります。
既存の採用手法もうまく活用しながらダイレクトリクルーティングも取り入れることで、自社の採用率、そして採用力をアップさせる
人材獲得競争がますます激化する状況下では、これまでの採用手法に固執するのではなく、さまざまな手法を併用することが採用を成功に導くカギとなるでしょう。ダイレクトリクルーティングは、工数がかかり業務負担となる恐れがある一方で、自社の採用力アップが期待できます。求人サイトや人材紹介といった従来の手法も大いに活用しつつ、ダイレクトリクルーティングにも取り組み採用力もアップさせていくことが、今後の人材獲得競争を生き残る上で必要不可欠といえます。
次回は、ダイレクトリクルーティングを始めるにあたって、採用担当者が現場に理解してもらうべきことについてお伝えします。
著者プロフィール
大浦征也 パーソルキャリア株式会社 doda編集長
2002年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。
一貫して人材紹介事業に従事し、法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティングなどを経験した後、キャリアアドバイザーに。担当領域は、メーカーやIT、メディカルやサービス業等多岐にわたり、これまでにキャリアカウンセリングや面接対策を行った転職希望者は10,000人を超える。
その後、複数事業の営業本部長、マーケティング領域の総責任者、事業部長などを歴任。2017年より約3年間、doda編集長を務め、2019年10月には執行役員に。2022年7月、doda編集長に再就任。転職市場における、個人と企業の最新動向に精通しており、アスリートのセカンドキャリアの構築にも自ら携わる。
社外では、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC)理事、一般社団法人日本人材紹介事業協会 理事にも名を連ねる。
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