男鹿市で“オサケ特区”は実現するのか 「日本酒」参入がほぼ不可能な理由:水曜日に「へえ」な話(2/4 ページ)
「日本酒を造りたい」――。このように考えても、酒税法の関係で、新規参入することは難しい。そんな状況の中で、これまでになかった動きが出始めている。ひょっとしたらひょっとして、変化が生まれる予感もしていて……。
新規参入を認めない理由
「清酒特区」が実現すれば、「稲とアガベ」で代表を務める岡住修兵さんは、どのようなことを考えているのだろうか。「自分たちだけがお酒を造るのではなく、全国から『日本酒を造りたい』という人に来てもらいたい。そうすることで、地元が再生してくれればうれしい」と語る。
男鹿市は、日本海に“ゲンコツ”のような形をして突き出た半島にある。「交通の便が悪そうだなあ。衰退しているイメージしかないんですけど」と思われたかもしれないが、その通りである。
人口は1955年に5万9955人をピークに減少していて、2015年には2万8375人とほぼ半分に。その後も減っていて、20年には2万6886人である。国立社会保障人口問題研究所によると、40年には1万2784人まで減少すると言われている。
「人口が減っていく」と試算されているが、日本酒を造ることによって、仲間が増えるのではないか。さまざまな産業が広がれば、男鹿市が再生するのではないか。このように考えているが、現在は参入することができないので、「その他の醸造所」(穀類、糖類を原料して発酵されたもの)カテゴリーとして、「どぶろく」などを造っている。
どぶろくではなく、日本酒を造って、国内で販売するにはどうすればいいのか。その切り札として、特区を考えているというわけだ。
それにしても、なぜ当局は新規参入を認めていないのだろうか。理由は2つあって、1つは「米不足」の不安である。戦後、日本酒の需要が伸びていて、このままでは米が酒造りに回ってしまうのではないか、という懸念があったので、生産調整しなければいけなかった。つまり、造り手の数を制限することで解決を図っていたのだ。
もう1つの理由は、「既存業者」を守るためである。多くの人がなんとなく感じているだろうが、日本酒の市場は厳しい。国税庁の調査によると、日本酒の移出数量(醸造所などから出荷された数)は1973年度にピークの177万キロリットルに達したものの、2020年度には3割以下の41万キロリットルまで減少しているのだ。
日本酒を飲む人が減って、造る人たちも減って。「このままでは大変なことになる。既存業者をなんとかしなければいけない」という力学によって、部外者をシャットアウトしている状況が続いているようだ。
筆者が取材したところ、新規参入の壁は、ものすごく高く、ぶ厚く感じた。「はい、あなたも新規でつくりたいのね。OKです! はい、次の方どうぞ〜」とハンコをポンポン押してくれそうな雰囲気は漂っていない。そんな状況もあって、岡住さんは新規参入ではなく、まずは「特区」を実現しようと考えているのだ。
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