7カ月で3000台! 無名ブランドの「ピザ窯」が、なぜ売れているのか:外はカリ、中はフワ(3/5 ページ)
2021年に創業したENRO(エンロ)はアウトドア用ピザ窯「窯焼名人」を発売し、約7カ月で3000台が売れた。同商品の価格は3万円を超えるので、決して「安い」とはいえない。実績がない新ブランドの商品なのに、なぜ消費者にウケているのか。
月5本の動画配信で、継続的にアプローチ
使い勝手のいいピザ窯を完成させたら、次に大事になるのは、いかに売り上げを伸ばすか。伊藤さんをはじめエンロのメンバーには、別企業でインテリア製品と旅行用品を扱うネット通販事業を軌道に乗せた実績がある。
とはいえ、エンロは創業したばかりの無名ブランドで、すでに一定の知名度や信頼を得ている競合もいる。そこで同社が取った販売戦略は、「ピザ窯を使い続けてもらうためのサポート」を徹底的に行うことだった。
「特定のシーンで使うピザ窯のような商品は、買って1回使った後は倉庫で眠っていることも少なくありません。その理由の1つは、販売者側のアフターフォロー不足なんじゃないかと。注力したのは動画コンテンツの配信です。利用者の悩みを解決する、旬の食材を使ったレシピを紹介するなど、また使いたくなるようなアプローチをしています」(伊藤氏)
エンロでは製品発売前に先んじてYouTubeチャンネルを開設。月5〜6本ペースで次々と動画が追加されていくので、「次はこれをつくってみよう」とチャレンジするキッカケになりそうだ。動画作成でタッグを組んだのは、ナポリピッツァ協会認定のピザレストランで5年半勤めた経験を持つピザ職人のTakuma(たくま)氏。レシピ考案や調理などを依頼しているという。
広告とSNSを通じて見込み客を集め、動画コンテンツで継続的にコミュニケーションを取る。シンプルな方法だが、これが購買意欲をかきたてたようだ。
「価格帯的に、サイトにきていきなり購入する人は多くありません。まずはインターネット広告で集客し、メルマガやLINE登録と引き換えにクーポンを配布して会員を増やしていきました。さらに、会員に動画コンテンツを配信するという地道なコミュニケーションを続けた結果、信頼を得て購入にいたったのではと考えています」(伊藤氏)
購入者層は、40〜60代の子どもや孫を持つ人がメインだ。都心より地方に住んでいる人が多く、バーベキュー場などよりも一軒家の庭で利用するケースが目立つという。使用時に煙が出るため、都心の住宅では使いづらい事情があるためだ。
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