インフォマートはPeppolとどう向き合うのか? インボイス制度に向けた戦略(3/3 ページ)
企業間取引のデジタル化プラットフォームとして、すでに強いポジションを持っているインフォマートは、インボイス制度導入に伴うSaaSベンダー増加の流れをどう見ているのか。またPeppolをどう見ているのか。同社取締役の木村慎氏に聞いた。
Peppolへの対応進める
インフォマートが、次の一手として期待するのがデジタルインボイス規格のPeppolだ。Peppolとは、請求書などの電子データをネットワークでやりとりするための規格。欧州を中心に、シンガポール、オーストラリアなど30以上の国で導入されている。日本においてはデジタル庁が推進し、インフォマートも参画する「デジタルインボイス推進協議会(EIPA)」が業界団体としてサポートしている。
「いつ、どこからかはこれからだが、Peppolには対応する」と木村氏。
Peppolを使えば、対応しているシステム同士でデータtoデータの請求書発行と受領が可能になる。つまり、Peppol対応のシステムを使っている取引先には、請求書を紙で郵送する必要もないしPDFをメールで送る必要もない。システムからシステムへデータがやりとりされるわけだ。
しかし、そのように各社のシステムがPeppolに対応した先には、BtoBプラットフォームのメリットが失われないだろうか? これまでは、大企業がBtoBプラットフォームを導入したら、その取引先もBtoBプラットフォームを使う必要があった。これが、導入企業が波及して拡大する仕組みだ。しかしPeppolに対応したら、取引先は必ずしもBtoBプラットフォームを導入する必要がない。Peppol対応の他社のシステムでもいいわけだ。
「Peppolを通じて、デジタル化したいという人が増える。さまざまなほかのシステムとつながることは利便性にもつながる」というのが、ここに対する木村氏の考えだ。
Peppolはいってみればデジタルインボイスの規格だ。どんな業界でも利用できるよう、最小公倍数的な作りになっている。これは消費税計算のためには十分でも、「請求書の代わりになるところまではいっていない。BtoBプラットフォームを通じて送受信することで、追加の必要情報をしっかり盛り込めるようになる」(木村氏)
インボイス制度のスタートと、デジタルインボイス規格であるPeppolは完全にはリンクしているものではない。しかし、インボイス制度は電子化に向けて企業を促し、電子化の先にはデータtoデータでやり取りを行うデジタル化が待っている。そして、デジタル化を実現するには各社が共通フォーマットでやりとりできるようになるPeppolが不可欠だ。
企業側から見た場合、紙をベースにやりとりしている現状の業務を生かしたまま電子化をサポートするシステムを入れるのか、それとも完全デジタル化を見越してシステムを入れるのかの選択になるだろう。インボイス制度への対応は、現場の課題ではなく経営課題であるということだ。
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