フィンテック企業からみた、新しい信用情報機関のあり方とは?(2/5 ページ)
日本の消費者信用市場が直面している現状とその課題、そして未来についてお伝えしていきたいと思います。
日本の消費者信用市場は、なぜフィンテックの波から遅れているのか
家計簿アプリや決済サービスなど、日本のフィンテックサービスの供給は間違いなくかなり進んできています。それは、銀行法の改正や新しい金融サービス仲介業法の成立などからも明らかです。
しかし、こと国内の消費者信用に関わるサービス群においては、グローバルのフィンテックの進化と比べると相対的に変化が乏しいと言わざるを得ない状況にあり、本質的に業界構造を変えるようなサービスが多くは生まれていないと考えています。
その要因は明確で、信用情報にまつわる「仕組み」や「法規制」にあります。本稿ではそれらを5つの要因に分解して解説します。
(1)接続コストの高さ
現在、日本の個人向けローンサービスでは、内閣総理大臣から定められた指定信用情報機関に契約し、ユーザーの信用情報の取得を行うことが法律で義務付けられています。しかし、扱う情報の機密性の高さから、この指定信用情報機関に接続するには物理的接続、つまり、専用線を引いてのアクセスが求められるということが、新規の事業者のローンサービス立ち上げにおける障壁の1つになっています。
Banking as a Serviceが進み、あらゆる金融機能のAPIが開放されつつあるいま、専用線を引いての照会が求められる、この領域に新規の事業者は気軽にチャレンジしようと思えるでしょうか?
(2):データの少なさ、固定化された柔軟性のないデータ
では、指定信用情報機関に簡単にアクセスできればこの市場は発展するのでしょうか。答えはNOです。
指定信用情報機関には、基本的にはお金の貸し借りに関する情報が保管されています。しかし、たとえ指定信用情報機関の情報にアクセスできたとしても、最低限の情報しか得られないのが現状です。例えば、ユーザーの借入・返済状況に関して、どういった背景があったのか、データを取得されたタイミングではなく今現在収入があるのか、未来に返済力が想定されうるのか、といった情報は組み込まれておらず、単に「返した」もしくは「返さなかった(遅れた)」という情報と、当時の個人の返済能力に関する情報だけが保管されているのです。
IT企業が、個人に対してのあらゆるデータを即時的に保有するようになり、一個人の多様な情報が入手できるようになった現在でも、それらの情報の受け皿に指定信用情報機関はなっておらず、ほかに登録先がないため、ユーザーは適切な与信評価を受けているとは言い難い状況です。
結果、最も不便を被るのは消費者で、フリーランスやギグワーカーだと審査が通らなかったり、一度「返さなかった(遅れた)」履歴がある人が5年や7年の期間、失った与信を取り戻すことができなかったりしているのです。
これまでになかった働き方が一般的になった現在、従来の情報だけで信用情報を決めつけるのには無理があります。データが必要だけれどもアクセスできない、アクセスできたとしても、現代社会に合ったデータではなかったり、ストックのデータだけでフローではなかったりするということです。
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