フィンテック企業からみた、新しい信用情報機関のあり方とは?(4/5 ページ)
日本の消費者信用市場が直面している現状とその課題、そして未来についてお伝えしていきたいと思います。
日本の消費者信用市場の発展に向けて
ここまでの現状と課題をもとに、これからの信用情報の取り扱いについての提言を以下に4つ挙げさせていただきます。
(1):より幅広い事業者への価値提供を
社会情勢が変わった今、指定信用機関情報制度において価値提供する相手をより広く捉える必要があると考えています。つまり、金融事業者以外のさまざまな事業者が、個人信用情報を活用したサービスを展開できるようにする必要があるということです。
具体的には持っているライセンスなどに応じて、アクセス権限レベルを変えればいいのではないかと思っています。金融事業者はデータへのフルアクセスができる一方、金融ライセンスを保有していない事業者には一部限定的に提供するなどです。
(2):アクセスできるデータを多様化する
現状、指定信用機関で管理してきたデータは、固定的であるとお伝えしました。それを改め、働いた履歴や収入履歴などのフローデータはもちろん、ユーザーデータを最も保有しているであろうIT企業などから、より多角的な視点でのデータも登録できるようにすることで、個人信用情報として活用できるようになるべきだと考えています。これまで存在しなかったデータの流通により、新たな活用方法も生まれてくるはずです。
(3):データの主権を個人に
データの主権を個人へ移すことが必要だと考えています。指定信用機関は管理するのみで、個人が自身の信用情報を運用するなど、自分のデータに対して決定権を持てる制度へ変えていきたいですね。
(4):アクセシビリティを高める
現在は専用線を引いて、インターネットから隔絶された世界で存在している信用情報を、データの多様化と活用の観点からシステム設計を抜本的に見直し、ソフトウェアとして作り直す必要があります。
中長期的には、特定の一企業である指定信用機関が管理するのではなく、分散型で管理できるようになるのがいいかもしれません。
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