“1泊100万円”の城主体験 宿泊客から「安すぎる」と言われるワケ:天守に泊まる(2/5 ページ)
「1泊100万円」で天守に宿泊、伝統ある城の“お殿さま”になれる──そんな一風変わった宿泊プランを提供する城が愛媛県大洲市にある。宿泊客は「安すぎる」と話し、地元住民は「目に見えて街が変わった」と話すこの取り組み。一体どんなものなのかというと……。
平均単価は150万〜160万円
大洲城キャッスルステイの料金は、基本料金が1泊1人55万円。利用は2人以上からなので、最低でも110万円からの宿泊となる。
これを分かりやすく税抜き価格で「1泊100万円の城」として打ち出しているが、オプションの体験を付けて利用する顧客がほとんどで、実際の平均単価は150万〜160万円ほどなのだという。
吉田さんはこの料金について「値段が象徴する価値というのはすごく重要なものだと考えています。安すぎる料金は、大洲城を宝としている街の人にも失礼ですし、インパクトに欠けます。100万円というインパクトのある値付けをまず決めて、料金に見合う体験をどう作っていくかを考えていきました」と説明する。
文化・歴史を体験し、守っていくための2日間
大洲城キャッスルステイは、体験内容に歴史や文化を反映させている。その理由は、前述のように大洲の文化や街並みを残すための街づくりから発展して生まれた取り組みだからだ。
通常の体験はこのような流れだ。
まず、松山空港までスタッフが送迎に向かい、大洲到着後にお客が男性なら“殿”として甲冑の着付けを、女性なら“姫”として着物の着付けを行う。その後、城への入場体験のセレモニーを行う。1617年、大洲藩初代藩主の加藤貞泰が、米子藩から大洲藩に移ってきた際の史実を基にして、移動のための馬や鉄砲隊の祝砲や法螺貝の合図、10〜20人にもなる家臣らの出迎えなどを演出する。なお、これらのパフォーマンスには伝統に造詣が深い住民が出演する。
家臣からの城内を案内した後、隣接している重要文化財の高欄櫓(こうらんやぐら)で夕食「お殿さま御膳」を提供。地域の最高級食材を用いて、お殿さまが召し上がったであろう色とりどりの料理を再現し、地酒と共に提供する。
隣接する施設には、ライトアップした城を眺めながら入浴できる浴場と、お酒を楽しめるラウンジを用意している。その後、天守にて就寝する。
翌朝は重要文化財である臥龍山荘(がりゅうさんそう)にて食事、御呈茶を提供。街歩きや街での体験を楽しんだ後、松山空港まで送り届ける。
これらを基本の体験として、オプションも含めてオーダーメイドで旅程を組み立てる。
「お客さまには、この城泊が結果的に文化財の保全につながっていくことを価値の一つとして伝えています。史実に基づいた入場体験、火縄銃、雅楽、神楽においても、伝統の継承を頑張られている地域の方に活躍の場を提供し、きちんと費用をお支払いすることで、彼らの文化維持活動の収益としていただいています。建物だけでなく、無形の伝統を持続可能なものにしていくことを狙っています」
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