低すぎる日本企業のDX成功率 DX迷子に陥る3つの要因:DXの本当の進め方(前編)(2/4 ページ)
DX改革に成功する企業は約10%という結果が出ている。失敗の要因として考えられる3点について解説していく。
顧客目線で感じるDXの成否
ここで筆者が実際に体験した企業のDXによる顧客体験の差の事例を紹介しよう。A社およびB社はどちらもよく知られたファストフード店である。コロナ禍で急進したビジネスの1つに飲食のデリバリービジネスがあるが、両社ともモバイル端末からの注文に対応している。
A社では店舗に着く前に自分のスマートフォンで注文を済ませれば、レジに並ぶ他の顧客よりも先に商品を受け取ることができる。一方、B社のモバイル注文システムを利用した際は、時間指定で予約注文したにもかかわらず、受け取りのときに「商品が用意できないので別のものに交換してもいいか」と店員から伝えられたことがあった。
その後も何度か利用したもののどこか頼りなく、顧客体験としてはA社と雲泥の差を感じた。ここでの洞察は「B社の店員がちゃんと教育を受けていないのでは?」ということではない。実はA社とB社では店内のオペレーションのデジタル度が全く違うのである。
A社では、商品を作って提供し決済するという一連の流れがデジタル化されている。それに対し、B社ではモバイルから受けた注文を一度アナログ化(=紙に)し、店員に伝えるオペレーションになっていた。新しい業務を受け入れるための土壌がそもそも異なっていることが分かる。A社はモバイル型の注文システムの導入自体が早かった。他社がその顧客体験だけをまねようとしてもうまくいかないのは、もともとのこういった細部にわたるデジタルテクノロジーの浸透度に起因することが多いのだ。
これは単なる推察であるが、A社にモバイル型の注文システムにおいて先を越されたため、B社も上層部の”鶴の一声”でなんとか実装までこぎ着けた。しかし、デジタル度合いの差で顧客体験の差につながってしまったという実態がうかがえる。
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