低すぎる日本企業のDX成功率 DX迷子に陥る3つの要因:DXの本当の進め方(前編)(4/4 ページ)
DX改革に成功する企業は約10%という結果が出ている。失敗の要因として考えられる3点について解説していく。
手段が目的化していないか?
経済産業省はデジタルガバナンス・コード2.0(旧DX推進ガイドライン)にて、DXを以下のように定義している。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(出典:出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」R.4 9月改訂)
自然界における生物の進化に例えるならば、DXとは「激変する環境下における、生き残りを賭けた変異と適応」であり、うまく乗り切れなかった生物には種の絶滅が待っていると言える。
生き残るために競争優位性を獲得することがDXの主目的であり、”変革”はその手段にすぎないのだ。手段と目的は連綿とつながる関係にあるものの、その位置関係を見誤らないことが重要である(図3)。
DXを正しく理解したその先
DXの本当の進め方(前編)では、日本企業のDXの現状に触れ、DXが進まない3つの理由を解説した。特に、「手段と目的の位置関係の整理」として解説したように、DXに対する理解の不正確さは多くの企業が今まさに直面している課題である。
本稿をここまでお読みいただいた読者の皆さまには、自社がどのようにDXを位置づけているかをあらためて確認してもらいたい。経営のトップ層から現場に至るまで同じ理解を持って取り組めているだろうか。
DXは「誰のため」「何のため」なのかを確認しあってみてほしい。理解度の差や解釈のズレを感じることになるだろうが、心配はいらない。差がある、ズレがあることが問題なのではなく、それを認識していないことが問題だからだ。問題を認識しさえすれば、解決に向けて進み始めることができる。
次回(後編)は実践編としてDXの本当の進め方について、事例を交えつつ解説していく。本稿を通じて企業のDXが少しでも加速すれば幸いである。
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